藤浪「自信の」28デイズ

 【2月28日】

 28日間のキャンプ最終日、宜野座のブルペンで最後まで腕を振っていたのは藤浪晋太郎だった。スマホの時計を見ると、11時56分。「77球目、いきます」。自らそう言って投手陣のラストボールをビシッと決めると、仮設席で見守った20人ほどの観客から拍手が起こった。投手コーチの香田勲男も満足げ。何より見ている者の心を打ったのは、藤浪がとても「いい顔」で締めくくったことだった。

 背番号19はその後サブグラウンドへ移動し、「走」のメニューをこなしてから、メイン球場へ向かった。そして、午後1時。大きな輪の中心で選手会長の梅野隆太郎が一本締めの音頭をとり、18年のキャンプはフィナーレを迎えた。藤浪にとって6年目の2月はどんな時間だったのか…。いや、本人には聞くまい。本番で成果が出れば、そこではじめて「良いキャンプだった」と言えるわけだから。

 金本知憲の総括会見を聞くと、「投」についてやや不安を感じているようだった。ランディ・メッセンジャーが右肩に問題を抱えているという。聞くところ大事ではなさそう。でも、大黒柱が万全でなければ「最悪」を想定するのも将の仕事。金本は「軽い炎症じゃないのかな」と話していたが、万が一メッセが間に合わないとなれば、じゃあ、誰が補うのか…。

 「このキャンプをずっと見ていて、ブルペン(での投球)が生き生きするようになりましたね。本人にいつ聞いても『だいぶ、戻ってきました』とか『状態がいい』みたいな感じで言ってましたし、充実していたと思いますよ」

 藤浪の1カ月間を梅野に客観評価してもらった。生き生き…。確かに、そう思う。紙面で読者に動画を届けたいほど、この日のラストボールも、投げ終えた面持ちも「生き生き」がピッタリだった。

 1月半ばの2週間、単身米国に渡りダルビッシュ有との自主トレに励んだ。藤浪本人に聞けば「ひと言では表現できないんですけど…自分にとってすごくいい時間を過ごせました」という。同行したわけではないし、映像を見たわけでもない。でも、そう語る藤浪の表情で十分、伝わってきた。

 金本は公(おおやけ)にはあまり言葉にしないけれど、藤浪のことをずっと気に掛けている。(当たり前か…)。指揮3年目の沖縄キャンプを終え、帰阪する金本に藤浪のことを聞いてみた。

 「雨もあって実戦のピッチングをあまり見られなかったけれど、ブルペンでは良くなっていると感じたよ。気持ちの面?そうだな…何か吹っ切れたような感じはあるよな。本人の中で自信めいたものがあるんじゃないのかな。あとはそれを実戦の場でどう出すか…。本人も分かっていると思う」

 エースだとか、大黒柱だとか、代名詞なんて実はどうでもいい。藤浪が藤浪らしくさえなればタイガースは「生き生き」する。金本は「去年より強いチームができている」と語ったが、目に見える「藤浪の自信」もその根拠になっているに違いない。=敬称略=

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