「ロサリオの後」5番を任せる男

 【2月25日】

 これが沖縄の空だ。朝起きてカーテンを開けると青空が広がっていた。それがレンタカーでホテルを出るとき曇天になり、球場へ着くと、ぽつりぽつり…。そしたら急にどっしゃ降り。かと思えば球場を出るときはピーカン。もう何年も来ているので察しはつく。

 宜野座経由で北谷(ちゃたん)へいこう。前の晩からそう決めていた。午後からは北谷公園野球場で中日とのオープン戦が予定されていた。キャンプ中よくあるパターンだけれど、遠征試合に出ない選手たちは自軍ベースの宜野座に居残って練習する。熱心なファンはよく知っているので、お目当ての選手が残留組なら試合へは行かなかったり…。だから、この日は宜野座で背番号7のユニホームを着たファンを何人も見掛けた。

 「おりゃぁ~」。豪雨が天井をたたく宜野座ドームから雄たけびが聞こえてくる。見れば、糸井嘉男がひとりで打撃練習をやっていた。黙々…と思ったら絶叫も交え集中力を高める。福留孝介や鳥谷敬が北谷へ向かう一方、糸井はまだ試合出場を「解禁」しない。

 秋まで続く長丁場を考えれば、2月に急ぐ必要はない。3月の中ごろからゆっくりとカウントダウンを始められれば…そう感じる。

 きまぐれなスコールで北谷の中日戦が初回ノーゲームになったころ、糸井は宜野座を離れ、場所を数キロ離れた施設へ移してコンディションを整えていた。先日も当欄で触れたが、金本知憲が糸井に望むこと…それは全143試合、ずっと戦列を離れないことである。信頼のポジションに糸井が座り続けさえすれば、18年打線の「土台」は安泰。金本にはそんな思いがある。もっと突っ込んで書けば、指揮官は糸井を「5番」…つまりウィリン・ロサリオの後ろに配置したいと考えている(はずだ)。

 韓国ハンファ時代にロサリオを打撃指導した正田耕三(現起亜タイガース打撃コーチ)を取材した話を10日ほど前にここで書いた。実はあのとき、正田は僕と別れ際にこんなことを言っていた。

 「ロサリオを活かすのは5番だよ。5番に金本監督が信頼するバッターを置けば、あいつは成績を残す。ハンファ時代はロサリオが4番でテギュンが5番を打っていた。テギュンがずっと安定していたから、ロサリオは3割30本100打点の活躍ができたんだよ」

 日本のファンにも馴染み深い元千葉ロッテの主砲、金泰均(キムテギュン)。ロサリオがハンファに在籍した2シーズン金泰均の成績を見てみると、正田の証言もうなずける。16年が打率・365で17年は・340。すなわち、これだけ強力な5番が後続に控えると相手バッテリーは4番と「勝負」しなければならないわけだ。

 糸井はそのときへ向け、じっくりゆっくり整える。偉そうに書いて申し訳ないけれど、昨年一年間糸井を見てきて思う。負けたときの悔しがりよう、勝ったときの喜びようは金本のそれに通ずる。糸井に対する将の信頼度…沖縄の空模様のようにきまぐれでないことだけは確かだ。=敬称略=

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