「高卒王国」の黄金時代

 【2月21日】

 こんなに心地よい高卒新人の取材はいつ以来だろう。注目度が全国区だから彼を囲む報道陣の数も他を圧倒する。それでも質問者の目を見て受け答えし、中身も通り一遍ではない。5年前の藤浪晋太郎もこんな感じだったな…なんて懐かしみながらメモを取った。

 プロである前に社会人として素晴らしい。文句なし…。これがロッテのドラフト1位ルーキー安田尚憲に対する僕の第一印象だ。

 朝から宜野座を離れ、沖縄市コザの広島キャンプにお邪魔した。侍ジャパン監督の稲葉篤紀が広島対ロッテの練習試合を視察するというのでやって来たのだが、いつの間にか僕の取材目的は「日本代表」から離れてしまった。

 安田といえば阪神がドラフトで獲得を狙った地元大阪出身の逸材である。試合前の打撃練習を見ていたカープの面々が「怪物でしょ」などと、その飛距離に惚れ惚れしていた。先発を外れた安田はプレーボールのあと室内練習場へ移動したので、僕も彼の特打を見させてもらったのだが、醸し出す雰囲気は10代のそれではなかった。

 「この前、会社(球団)の人と高卒の選手の話をしたところですよ。安部(友裕)で10年掛かりましたよね…と。選手はそれぞれ成長する速度がある。例えば丸とか鈴木誠也とか順調な速度で成長する選手もいれば、ゆっくり育ってレギュラーを獲る安部みたいなタイプもいる。丸、誠也、安部…会沢もそう。西川龍馬も坂倉も出てくる。6年目で今回1軍キャンプに呼ばれた美間とか高橋(大樹)も楽しみにしておいてください」

 カープ1軍打撃コーチの東出輝裕が「高卒野手」の育成について語ってくれた。東出自身がそうであったように、カープは代々、生え抜きの高卒野手が育つ球団である。その理由、要因は何なのか。東出にも明確なアンサーは「ない」という。清宮幸太郎や安田のような超高校級は例外として「高卒は何をどこで掴むか分からないから(見極めが)難しい」そうだ。

 東出と話をしながら阪神の球団史を調べたくなった。例えば、生え抜きの高卒野手で5年間レギュラーを張った阪神の選手はどれくらいいるのだろう。この30~40年でパッと思い浮かぶのは掛布雅之…一人??いや、違う。記録部に確かめると、掛布の後は新庄剛志が96年から00年まで5年間、100試合スタメンを張っていたそうだ。ただ、それにしても、新庄から17年間、高卒野手のレギュラーが不在のまま。これは伝統球団として由々しき事態と言える。育成を使命にする金本知憲が中谷将大や北條史也、植田海の育成に熱を入れたくなるのもよく分かる。

 「これは僕の考えですけど、高卒は簡単に見切っちゃダメだと思うんです。長い目で見ることが大事なんじゃないですかね…」

 東出にはそんな持論があるようだ。そうそう、この日カープ2軍の練習試合で中村奨成が「プロ初安打」を放ったと聞いた。清宮、安田を見たので次は中村を……。「高卒王国」の黄金期が長く続くのは必然である。=敬称略=

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