他球団から請われる人間性

 【12月7日】

 広島の編成権を持つ人物から聞かれたことがある。阪神を構想外になったある選手の人間性について。「彼の性格を知っていたら教えて欲しい」-。各球団、補強の対象は他球団を戦力外になった選手も含まれるのだが、実力はもちろん、それ以上に重視されるのは人間性だといわれる。力はあるしまだまだやれる。環境を変えれば再生できそう…そういった選手がどこの球団からもお声が掛からない。そんなことがよくある。

 プロ、アマ問わず、スカウティングに携わる者のアンテナは前述したように、ときに我々報道陣にも張られる。他角度から客観的な情報を集め、人間性に??マークがつくようなら、リストから外すこともフツーにあると聞く。

 新入団発表の季節になると、一方で気になるのは戦力外選手の進路である。本紙も年末に「惜別球人」という「第2の人生もの」の連載をやるのだが、トライアウトで不合格となり、進路未定のまま年を越す者も沢山いる。人間性=×だから進路が…なんて語るつもりはない。ただ他球団のフロントと話をしていても、選手は、プレー以外の振る舞いも「見られている」んだな…と感じるのだ。

 オフは球団の背広組の方々と接する機会も多い。今週話題に上ったのは6日に行われた阪神の新人研修会。2軍守備走塁コーチの藤本敦士が大山悠輔ら今年のルーキーたちを前に「野村克也の教え」を伝えたそうだ。「プロ野球人である前に、社会人であれ」。藤本にとって野村は阪神入団時の監督で、「この言葉が一番耳に残っている」という。以前ここで書かせてもらったが、この言葉は元来、川上哲治の名言として有名になったもの。「社会人としてしっかりしないと、プロ野球選手として認められない」。藤本の講義内容を聞いて、思い出したことがある。

 デイリースポーツが先月掲載した阪神の新2軍監督、矢野燿大のインタビュー連載である。

 「野球をうまくさせてあげるということプラス、(2軍では)人間的な教育もしていかないといけないわけで。全員を1軍に上げられないし、戦力外になって社会に出ていく選手も沢山いる。挨拶はもちろん…そういうところもしっかりさせていかないと(それをできない選手は)後々苦労する…」

 若くして退団した阪神OBがファンを失望させる事件を起こしたことが過去に何度かある。言うまでもなく、彼らの社会的責任は免れない。ただ、その種の報道を耳にする度、当該選手の阪神時代を思い起こし「球団の人間教育」について考えさせられたりもする。

 毎年恒例の新人研修を、その元選手たちも受けてきたわけだ。僕は金本知憲が阪神監督になって球団の体質そのものの「変革」を期待してきた。ただ、この2年間を振り返って金本に聞けば、やはりうまくいかないことの方が多そうである。技量や肉体の育成…と同時に、まず社会人として一流であるための教育をどう施すか。何も2軍に限らない、球団の使命だと感じる。=敬称略=

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