投手の適性…金本の眼力

 【11月25日】

 阪神タイガースファン感謝デーの前座に出演させてもらった。本番開始前の40分間、朝日放送アナウンサーの司会で各紙の虎番がとっておきのネタを披露した「スポーツ紙記者のトークショー」。僕はデイリースポーツを代表して、知られざる?「金本知憲の苦悩」を紹介させてもらった。

 「挑む」をスローガンに打倒カープを目指した2年目の金本丸はご存じのように、いわゆる申し子が伸び悩んだ年でもあった。北條史也、原口文仁、そして昨季新人王の高山俊…。彼らがレギュラーに定着していれば金本の目尻はどれほど下がったことか。期待が大き過ぎた所以かもしれない。自らの指導が実らず、チルドレンたちが停滞すると、金本の悩みは深まった。あれは7月半ば。虎将は苦笑まじりにこう話していた。

 「俺、もしかしたら、バッターよりピッチャーの適性を見抜く方が合っているのかもな…」

 どういうことか。そのとき金本は真相を語らなかったので、チームの人間に根ほり葉ほり聞いてみると、なるほどよく分かった。

 2位躍進を支えたのは、数字を見るまでもなくブルペン陣の奮闘である。5投手(岩崎、高橋、桑原、マテオ、ドリス)が60試合以上に登板したのはNPB史上初。今シーズン、阪神が誇った「新・勝利の方程式」。その発案者は、実は金本だったというのだ。

 (1)桑原謙太朗=セットアッパー抜てき

 (2)ラファエル・ドリス=マルコス・マテオに代えてクローザー指名

 (3)岩崎優=先発から中継ぎへ配置転換

 昨季4位から浮上を目指すシーズン前、香田勲男らコーチ陣と投手の適性を話し合った。担当コーチの意見を尊重する-金本は基本的にそういうスタンス。監督就任以来、僕ら報道陣にも「俺はピッチャーのことは分からないから」が口癖だった。技術的なことは分からない。それでも、2年目を迎えるにあたり、打者目線で投手の持ち場を見抜けるようになってきたのかもしれない。ときに香田と本音をぶつけ合いながら、自身の主張を押し通したこともあったと聞く。付け加えれば、15年オフにFA宣言した高橋聡文の獲得を球団に願い出たのも、金本だった。

 投手交代は「勉強、勉強。継投は難しい」。金本はシーズン後、僕にそう話していた。それでも、ここだけの話…シーズン終盤のある試合で、継投を批判したスポーツ紙の評論に「あれは絶対に違うと思う」と、確信とプライドをにじませて反論することもあった。

 先日都内で開催されたNPBアワーズで桑原、マテオ、ドリスがタイトル表彰された。野手陣がベストナイン、タイトルと無縁だったことは、金本にとって不本意に違いない。もちろん、野手のレギュラー整備は今のチームにとって不可欠だし、金本もその思いを強くしたと思う。その一方で、僕は就任3年目を迎える金本の投手育成、その眼力に注目している。=敬称略=

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