安定の…新本部長

 【11月18日】

 阪神球団常務の谷本修が雨降りの安芸にやってきた。谷本は金本体制から現役職を担うフロントマンだが、読者にはまだ馴染みが薄いかもしれない。僕も人となりを深いところまで知らないけれど、現場だけの印象でいうなら、全くソワソワしたところがない幹部である。「安定の-」なんて今ふうに形容すると怒られるかもしれないが、どんな仕事を任されても間違いのない、外れのない、そんなどっしり感があるように映る。

 「安定」を辞書でひけば、物事が落ち着いていて、激しい変動のないこと-とある。金本の目指す「変革」には実はこういうバックアップが必要なのかもしれない。

 僕が接してきた谷本を読者に分かりやすく紹介すると、「チームに寄り添う人」である。具体的には、まずチームの練習をしっかり見る。NPB関連など外せない業務以外は必ず試合前練習に顔を出している。幹部が練習を見るのは珍しくはないが、谷本の「見る」は「本気で視る」を意味する。

 「宿舎から我々と一緒にチームバスに乗って球場へ行くんだもんな。最初は驚いたよ」。ヘッドコーチの平田勝男がそう話すようにビジターゲームはほぼ皆勤。練習開始と同時にベンチの最前列に腰掛け、選手の動きに目を凝らす。そんな谷本の姿は我々の間でもお馴染みになった。メディアの人間が話し掛ければ、フランクに世間話もするし、こちらが気付かなければ、谷本から「お疲れさまです」と声を掛けられることもある。

 谷本本人に確認すれば、今季はレギュラーシーズン全143試合のうち「7割くらい」は、練習から見たという。だから、月9回ほど公休日のある本紙の番記者以上に練習を見ているかもしれない。

 シーズン中にも書いたが、ルーキー大山悠輔が1軍に昇格した際谷本は「あれ?こんな感じの選手だったかな…」と話していた。試合前の練習に注目すると「スイングが小さく見えた」のだという。

 実はこのとき金本も同じように感じ、フリー打撃中の大山にこう伝えていた。「全スイング、オーバーフェンスを狙っていいぞ」。谷本はこのやり取りを知らなかったが、しばらくして「スイングが大きくなって飛距離も伸びましたね。大山くんは元来こんなイメージです」と話したのだ。梅野隆太郎の練習中に「きょうはいいですよ。本塁打、打ちますよ」と予告して、ズバリ当てた夜もあった。

 そんな谷本が先日発表された人事異動で「球団本部長」の職につくことが決まった。GM職を置かない阪神にとって、このポジションはチーム作りにおいて「最も」といっていいほど責任がのし掛かる。選手育成、発掘、FA及び外国人の補強…谷本の舵取りが金本阪神の行く末を左右するのだ。

 本社、球団内で谷本の人柄を取材すると「イエスマンではない」「もの申せる人」と聞く。そうだとしたら期待が膨らむ。ときに金本とぶつかるくらいの激論があってもいいと思う。新人事が定まれば、安定の谷本に「続・変革」の指針を聞いてみたい。=敬称略=

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