最近の子、あっぱれ

 【11月1日】

 浜口遥大、あっぱれである。阪神もこの新人には泣かされた。5戦3敗…勝率10割を献上した左腕が日本シリーズの土俵際で大仕事だ。名鑑で彼の生年月日を見てみると、95年3月16日とある。阪神・淡路大震災の2カ月後だから僕がデイリースポーツに入社するひと月前…。彼のような若い力が強大戦力と堂々と渡り合う。横浜スタジアム最上段の記者席にも、その気迫はビシビシ伝わってきた。

 「この大舞台でね…。最近の子は凄いですよね」。この夜、TBSの解説で大魔神・佐々木主浩がそんなふうに話していた。

 最近の子か…。オッサン記者は普段から「その世代」とのギャップに手を焼いている。取材現場では「何と言えば分かってくれるかな…」なんて、手探りで20代前半の後輩に話し掛けてみたり…。

 次世代の育成は僕らの世代の責任だが、この種は球界でもよく話題に上がる。残念ながら「最近の子」浜口とは面識がない。そもそもDeNAにあまり知る顔がいない。ベンチではかつて阪神で活躍した、打撃コーチの坪井智哉くらい。ならば…と実はこのCS前、宮崎まで馴染みのベイスターズOB取材しに行ってきた。フェニックス・リーグに参加していたカープに森笠繁という2軍打撃コーチがいる。カープ入団は新井貴浩と同期で、08年オフにベイスターズへ移籍。引退後は古巣へ戻り、育成世代の指導者となった男だ。

 晩年ベイスターズではファーム暮らしも続き、若い世代と苦楽を共にした彼は現在、若鯉の育成に当時の経験を活かしている。

 41歳になった森笠に「最近の若い子」について聞いてきた。

 「やっぱり話が通じないこともありますよ。でも、通じないことも通じさせるようにしないと、指導にならないので。だって、そうでしょう。今の時代、裏へ連れて行って、殴って言い聞かせるわけにはいかないですから(笑)」

 きのうも当欄で書いたが、補強依存しないDeNAは「生え抜きの力」で常勝時代を築こうとしている。そういう意味ではカープの飛躍はお手本である。宮崎で取材したカープ対DeNAの教育リーグではカープが圧勝し、かつて阪神でコーチ経験のあるDeNA2軍監督代行の福原峰夫はカープのスタッフに話したそうだ。「力の差を感じたよ」。2軍で緒方カープの黄金期を支える森笠は言う。

 「若い子の話は聞きますよ。でも、僕らが若い選手の言い分に合わせるのは違うでしょ。結局、1軍に上がっていく選手は僕ら指導者が言っていること、考えを分かるようになった子なんです。分からない選手は終わっていきます」

 なるほど…と頷きながら、今の自分に置き換えてみたり…。一方で金本知憲に聞けば「俺は『今の若いヤツは』とは言いたくない」という。「俺らも若いころは大人からそう言われていたんだよ。若い子らのことも認めてあげないと」。この夜、「先輩方に感謝です」と清々しい目をした浜口を見ながら、金本の言葉を思い出した。=敬称略=

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