きっと、星野以上
【10月1日】
金本知憲はウソをついている。15年秋の阪神監督就任以来、実はそう思いたいことがある。
巨人戦は意識するか?
今まで会見、私見を含め、この質問を3度ほど投げかけたことがあった。当然、意識する!そう返してほしいのだが、いつ聞いてもこちらの期待する反応はない。就任初年度は「ヤクルトは意識するよ。前年度の優勝チームだから」と返ってきた。確かに正論。だから2年目はカープを意識して戦ってきた。つまり、金本は強いチームを意識する。純粋に発言だけ聞いていると、これが一貫した監督・金本の考え…。それでもウソであってほしいと思う。巨人だけはいつだって強く意識する-。阪神の将として、これが偽りない金本の本音であってほしいのだ。
4割2分9厘。
この数字、何だか分かるだろうか。この日の勝利を含めた巨人戦の通算勝率である。阪神から見た「伝統の一戦」の勝敗は、720勝959敗67分け。これまで1746試合戦って、阪神は巨人に対し、239の負け越しがある。この“負債”を完済するなんて気の遠くなる話だが、T-Gが「伝統の一戦」であり続ける為には、阪神がこの先何年間も、ずっと勝ち越しを続けなければならない。
今季はどうだったのか。最後は連勝で意地を見せたものの、残念ながら、勝ち越しは果たせなかった。10勝13敗2分けだから、また負債を3つ増やす結果になった。
ファンで成り立つプロ野球である。言うまでもなく、阪神球団は阪神ファンのおかげで成り立っている。これを強く意識して戦ったのが虎将時代の星野仙一である。
「巨人戦はビタミン剤なんや。巨人に勝ったら勢いがつく。だから、巨人には勝たなあかんのや」
この言葉が虎党の心をわし掴みにし、きっと選手も踊らされたに違いない。星野の就任1年目に12勝15敗1分けだった巨人戦は、2年目に17勝10敗1分けまで跳ね上がり、これがVに直結するのだ。
阪神を率いた星野は「名演出家」であったと感じる。仮に心で違うことを考えていても、自身の言葉でファンや選手、マスコミがどう反応するのか、時に計算もしながら発信していたように思う。
金本には金本の価値観がある。それは十分承知しているが、ことファンや選手の心をグッと掴む術は星野を真似る価値はあると、僕は考えている。勝率で負けて順位で勝った今年の巨人戦だけど、実は17年シーズン、もう一つ阪神が巨人をしのぐ数字がある。
観客動員である。最終的な数字は後日書かせてもらうが、阪神の公式入場者数は300万人を突破し、12球団最高になることは間違いない。巨人は昨年比減が確定。金本阪神2年目に対する期待値がいかに高かったか…よく分かる。
「この巨人との2試合は全力でいこうと思ってたよ」。これが金本が試合後に発したコメントだ。昔から金本の負けん気を知る者から言わせてもらうが、金本は巨人を強く意識している。きっと、星野以上だと思う。=敬称略=