4番問題

 【9月25日】

 消化はともに136試合。残りはともに7試合。阪神とDeNAである。CSでぶつかる可能性のある両軍だから、前哨戦ともいえる5番勝負。甲子園で連敗し、次は横浜で3連戦に臨む猛虎だけれど、何だか攻撃陣に迫力がない。

 それでも、対戦成績は阪神の13勝9敗。リリーフ陣を含めたディフェンス力を見比べると数字上、虎が優位に思える。ならば、攻撃力はどうだろう。同じペースで長丁場を戦ってきた両軍の成績を見れば、チーム打率、総得点がほぼ変わらないのは面白い(4面の勝敗表参照)。しかし、ある数字を比べてみると、この2チームに決定的な違いがあることが分かる。

 4番打者である。

 この夜、長い長い「0行進」をとめるべく、金本知憲は中谷将大を4番に据えた。ここに金本の苦悩が浮かび上がる。気になったのでデイリースポーツの記録部に確認してみた。

 「今年、阪神で4番を打ったバッターですか?え~っと…6人もいますね。福留、糸井、原口、ロジャース、大山、中谷です」

 一方のDeNAはどうか。首位打者を争う宮崎敏郎が1試合だけ4番に座ったが、それ以外は、ホセ・ロペス(68試合)と筒香嘉智(67試合)の両輪が、その座を担ってきた。現在、ロペスはセの打点王争いをリードし、筒香は最高出塁率でリーグトップを競う。本塁打は両者合わせて63本。DeNA監督のアレックス・ラミレスにとっては、頼もしい「2人の4番」であったに違いない。

 僕の関心はもう来年へ向いている。3試合連続完封負けの夜だから“やけくそ”だと思われそうだが、先日からコラムでそう書いている。来年は誰が阪神の4番を打つのか。これも、非常に興味深い話である。元阪神監督の野村克也が力説した「4番とエースは育てられない」論に金本が挑戦するならば、中谷将大や大山悠輔も候補になる。でも、やはり福留孝介に頼ることになるのか。それとも助っ人が担うのか。現場とフロントは長きにわたるこの「4番問題」をどう考えるのだろう。取材していて、少し気になることがある。

 金本は監督就任時に「変革」を唱えた。当時の会見で「外様の僕が言うのも変ですけれど…」と前置きし、不在が続く生え抜きの大砲の育成を渇望し、フロントもこの方針に賛同していた。体制3年目へ向かう今も、金本のスタンスはブレていない…はずである。

 既に水面下で補強に動いているフロントの考え方はどうか。「やはり生え抜きでは厳しいか。来年こそ強力な外国人に頼りたい」-この2年間を踏まえ、そんなふうに考えている、かもしれない。

 4番は助っ人-そんな青写真でも構わないと思うけれど、問題は「理念」である。仮に金本とフロントの考え方にズレが生じ始めているとすれば、「超変革」は看板倒れに終わる。攻撃力を増す為に助っ人を複数獲ってでも…。勝ちにこだわる3年目。この大義が前面に出れば理念は崩れかねない。4番問題しかり、議論の尽きないオフが待っている。=敬称略=

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