「検証」を書く為に

 【9月20日】

 まだまだ、日本一だって狙えるんだ。金本知憲は前日19日の全体練習で、選手やスタッフにそんな旨の号令をかけたという。過去に敗者復活で日本シリーズを制したチームもあるんだし、現行制度でその道が開かれている限り、最後の最後まで戦うのみ…である。

 指揮官が現場の士気を高めるのは当然だし、声援を送るファンがいる限り、その期待を裏切ってはいけない。それは分かっている。分かってはいるんだけど、やはりどこかで、むなしさもある。

 チームの戦意に水を差すわけじゃないけれど、CS制ができて以来ずっと、タイガースがそこへ向かうむなしさを感じてきた。07年から導入されたポストシーズン制度だから、星野仙一の03年、岡田彰布の05年は、CS発足前のVである。潔く140数試合で決着をつける。オッサン記者は感じるのだ。あの時代は良かった、と。

 長々とそもそも論を書くと、怒られそうだ。いざCSが始まればまた、やいのやいの書くのだから黙っておきなさい…そんな声をいただくかもしれない。まあ、何を言いたいのかというと、僕の関心はもう来シーズンへ向かっているということだ。半年にも及ぶシーズンの長丁場で、来年はどうすればカープを倒せるのか。仕事柄、当然のことなんだけど、昨秋以上にそんなことばかり考えている。

 敗者復活のチャンスはあれど、チームとしてシーズンのV逸を悔しがる。それでいいと思う。デイリースポーツの番記者もそのうち必ず書くことになるが、各スポーツ紙はそろそろ「検証もの」の連載をスタートさせる。

 ここで「球団関係者」や「チーム関係者」の証言が出てくる。それが真実かつ建設的な提言であれば、3年目へ向かう金本体制のプラスに働くと思う。虎番のキャップだった昨秋は、僕も署名入りで書かせてもらった。この手のものは書きづらい。優勝を逃したわけだから、ドンドコと太鼓をたたくわけにはいかない。取材は深いところまで及ぶし、まず、球団やチームの首脳からは嫌がられる。

 もう僕は虎番じゃないので検証連載には関わらない。だけど、仮に虎がCSから勝ち上がったとしても、いずれ当コラムで何らかのものを書きたいと思っている。

 菅野智之に屈したこの夜、金本は「好投手を打つ為に持つべき強い意識」について話してくれた。これもまた追々、書こうと思う。

 阪神はきょう広島でカープと戦う。僕はここからしばらくカープを追いたいと思っている。6年前の11年、現役時代の金本は僕に語っていた。紙面にも書いた。「4~5年後を見ててみ。広島の黄金時代がくるから」。その根拠を探す為にも、カープを追ってみる。

 3日前、連覇したカープの打撃コーチ、東出輝裕から聞かれた。

 「風さん、ウチの石井琢朗(打撃コーチ)さんが、最近何を考えているか、分かりますか?」

 当然、CSのことでしょう。

 「秋季キャンプのことです」

 そんな王者をじっくり取材してみようと思う。=敬称略=

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