平均飛距離の取材

 【8月11日】

 今岡真訪のギモンに答えたくて岡山から広島へ向かった。倉敷で藤浪晋太郎の登板試合を取材した前夜、2軍打撃兼野手総合コーチはふとこんなことを言っていた。

 「新井、よう打ちますよね。なんで、あんな打つんでしょう。別人でしょ。何があったんやろ…」

 当然、ファームの首脳陣もペナントレースの行方が気になっている。きょうカープはどうなった?毎晩そう呟きながら、スマホに指をやる。スポーツニュースを見る度、首位球団のポイントゲッターが映える。セ・リーグMVPに輝いた昨季はもちろんだけど、今季も新井貴浩の殊勲打が実に目立っている。40歳にして衰えず…。なぜ、勝負強いのか。担当外だから改めて本人に確認することもなかったが、まあまあ近くまで来たので、会いに行ってきた。

 広島で阪神戦以外のカードを取材するのは何年ぶりだろう。巨人・阿部慎之助の2000安打がかかった試合で新井の取材である。

ちょっと面白いデータを見つけたので、新井本人にぶつけてみた。

 「へえ、そうなんですか?」

 マツダスタジアムのベンチ裏で数字を見せると、背番号25は興味深そうに反応してくれた。共同通信デジタルのデータによると、新井の本塁打の平均飛距離が年々上がっているという。アラフォーの選手が軒並み飛距離を落とす中、特筆すべき数字だと思う。具体的に記せば、2シーズン前の15年が115メートルで16年が117・1メートル。そして、今年が118メートル。オーバーフェンスのアベレージが、この3年で3メートルアップしているのだ。

 「要因は分からないですけど…ただ、この3年間、技術的な面はまだ上がっている…自分では、まだ伸びしろがあるような気がしています。フィジカルは年齢とともに必ず落ちてくるので、そのうえで結果を出そうと思えば、技術を上げていかないといけない。僕の場合、取り組んできたものが少し形になりつつあるんです。下半身のきり方、バットのヘッドが体に巻き付く感覚もそう…。技術が上がってきている実感はあります」

 歳をとればパワーは落ちる。加齢に逆らい、長打を追求するならパワーに頼らないテクニックを身につければいい。発想の転換が「衰えない40歳」を生んでいた。

 ラジオで横浜スタジアムの実況を聴きながら、マツダの記者席で目の前の試合を追う。阿部の通算1998安打の適時打で巨人が逆転…。イヤホンからは中谷将大の3ラン…。これで7・5差。ほんのわずかに光が差し込んだか。

 ちなみに…いま脚光を浴びる阿部の本塁打の平均飛距離は今季112・4メートル。この3年で4メートル減(これが正常だ)。新井は言う。「僕の場合(飛距離は)気持ちの部分も大きいかもしれません。何とかファンに喜んでもらいたい。皆で優勝したい。そういう気持ち的なものも関係あると思いますよ」

 もう一つ触れておけば、中谷の今年の本塁打(13号を除く)は平均110メートル。24歳のパワーに「技術」「気持ち」が乗っかれば3年後が楽しみである。=敬称略=

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