シンノスケと言えば…

 【8月8日】

 あなたは阿部慎之助が好きですか?阪神ファンに聞けば、大半が「嫌いです」と答えるはずだ。もちろん、人間的な話じゃない。阪神にとってこれほど嫌(イヤ)なバッターはいない…という意味の「嫌い」である。接戦の終盤、ピンチで阿部を迎えると、目を瞑ってお祈りするしかない…。そんな経験をされた虎党も多いだろう。

 初回に先制打を浴びて、あと5本。三回にチャンスメークをされて、あと4本…。おいおい、阿部のためのゲームじゃねえぞ。そうボヤきたくもなる夜になった。王貞治、長嶋茂雄、川上哲治、柴田勲に次ぐ、巨人史上5人目の2000本安打達成へ、勢いが止まらない。虎が足踏みさせなきゃいけないのに、東京ドーム前に設置されたカウントダウンボードをキラキラと輝かせてしまっては…。

 「僕が阿部選手に初めて会ったのは、彼が大学3年生のときでした。山田秋親、田中総司(ともにダイエー入団)投手ら、大学日本代表の選手たちと新宿の居酒屋さんで一緒に食事をしたことがありまして…。『キャッチャーでシンノスケ』といえば、片岡新之介(元阪神捕手)でしょう!と言ったら、シーンとなりましてね。そのとき阿部選手には言っておいたんですよ。この先、何かあったら、阪神をよろしく頼むね!と…。21世紀入団、初の快挙ですか。篠塚さんも、原辰徳さんも、由伸監督も打ってない…嫌な打者ですよ」

 阪神ファンを代表してタレントの松村邦洋に聞いてみると、19年前にスベったハナシも交え、懐かしそうに答えてくれた。

 阿部のお父さんが習志野高時代に掛布雅之と同級生。だから阿部は幼いころから阪神ファン…。彼が中央大からドラ1で巨人に入団した当時、そんな話を聞いた。松井秀喜しかり、よりによって、なんで巨人やねん…と、当時の虎党を悲ませた(はずだ)。01年、彼のプロデビュー戦はここ東京ドームの阪神戦。初打席で星野伸之からヒットを放つなど、5打数2安打4打点。現場で取材していたから、よく覚えている。38歳になった彼が今も虎に牙をむき続け、早ければこの3連戦で偉業を達成する。ここまでの選手になれば嫌も何もない。阪神ファンに怒られそうだが、あと4本…メモリアルを見届けたい気持ちも出てくる。

 353試合で打率・288、53本塁打、169打点。本紙記録部に聞けば、この夜を含めた阿部の対阪神戦成績だという。カード別で見てみると、対DeNAに次ぐ好打率だとか。1996安打のうち350本を阪神戦で打っているのだから、そりゃ、やられた感は残るはず。ちなみに金本知憲の対巨人戦通算打率は・283。巨人ファンが金本を嫌う以上に、阪神ファンは阿部のことを嫌っている(ことになるかもしれない…)。

 「キャッチャーでこの数字ですから、凄いですよね。良い女房は阿部慎之助。悪い女房は阿部定…ってね」。若者で阿部定事件を知る人も少ないと思うけれど、そう話す松村も「敵ながらアッパレ」の境地…なのだろう。

=敬称略=

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