62三振、80四球

 【8月5日】

 パンダに対するベンチの信頼が厚いのだろう。改めてそう感じた戦況がある。五回1死一、二塁で巡ったジェイソン・ロジャースの打席。フルカウントになると、金本知憲は三塁コーチャーの高代延博にランエンドヒットのサインを送った。結果はライトオーバーの2点タイムリー。殊勲打の詳細は番記者の原稿を読んでもらうとして…ここで二塁走者の上本博紀、一塁走者の福留孝介を同時スタートさせるためには、金本が消さなければならないリスクがある。

 併殺を招く、内野手の正面をつくライナーと、三振である。ライナーが飛べばハードラック。一方三振のリスクは打者への「信頼度」で薄まるものだ。新助っ人はこの時点で得点圏打率5割を超えていた。金本は評論家時代から「野球は確率のスポーツ」と語る。だとすれば…。確実に点差を広げたい中盤で“冒険”するためには、勝負強さのほかにもう一つ、確率の高い確信に満ちた裏付けが必要になる。「パンダの眼」である。

 これでもかとボール球を見極めるパンダを眺めていると、どうしてもマウロ・ゴメスを思い出す。阪神は昨オフ、ゴメスとの契約を更新しなかった。新助っ人探しの難航が予想される中、球団内には「ゴメスを残せば…」の声も確かにあった。もちろん、フロントは金本ら現場の意向を重んじる。でも、残さなかった。その大きな理由はここで説明しなくとも、ファンは察しがつくかもしれない。

 かつて金本はゴメスに伝えたことがある。「フォアボールを好きになってみたらどうだ」と…。ゴメスは「それはいい考え方だね」と反応したが、ボール球、特に外角へ沈む変化球の見極めには最後まで苦しんだ。昨季、ゴメスの三振数はセ・リーグワーストの130。ちなみに、四球は48だった。

 この先、ロジャースが日本でどれほど実績を残すか分からないけれど、あくまで現段階で言えること…それは、ゴメスにないものを備えているということだ。パンダの三振はここまで16試合で7つ。このペースは1シーズン、143試合に換算してみると、62三振になる。同じく、四球は現在9だから年間80個ペース。つまり、三振はゴメスの半分以下。四球はゴメスの倍近くになる計算である。

 阪神担当の広島スコアラー、玉山健太にロジャースの選球眼について聞いてみた。「彼は打つポイントが近いから、ボールを長く見られるでしょ。それが一番の理由だと思います」。対戦カード別でロジャースに最も四球を与えているのがカープ。だから、玉山もそのあたりは神経質になっている。

 パンダが適時打を放った五回の打席。2ボールからの3球目を自信を持って見送った。が、判定はストライク。そりゃないぜ!と言いたげだったが、彼は文句を言わず、白い歯を見せた。このメンタルもいい、と僕は感じている。秋山拓巳がアクシデントで降板した非常事態のゲーム。一気に2点を奪った金本のタクトは信頼度の高い「パンダの眼」が鍵になっていた。=敬称略=

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