客寄せパンダになれ
【7月22日】
ホーナー級衝撃!この日、都内の売店でデイリースポーツを買うと、1面に派手な見出しが踊っていた。21日のジェイソン・ロジャースの連発をワッショイと報じたものだが、リアルタイムでボブ・ホーナーを知る者からすれば、本紙整理マンも最上級で称えたもんだなあ…と、ほほ笑ましかった。
1987年のシーズン途中に来日したホーナーがデビューカードの阪神戦(神宮)で大暴れした夜の衝撃はよく覚えている。高校生だった僕は池田親興が1試合3発を食らった試合をラジオ中継で聴き、「本物がやって来た」と鳥肌が立ったもんだ。瞬間的なインパクトたるや、これまで観てきた外国人ではランディ・バース以上。ホーナー人気があっという間に日本を席巻した30年前が懐かしい。
ホーナー旋風で思い出すことがある。もう時効だから書かせてもらおう。誰とは言わないが、阪神ベンチで指揮をとっている男が今もヤクルト球団に黙っていることがある。広陵高校卒業後、遠路広島からヤクルトのプロテストを受けに来た青年は、埼玉・戸田の2軍施設でホーナーの使用済みバットがゴミ箱に捨ててあるのを見つけ、要らないのなら持って帰ろう…と、そっとバッグにしのばせたのだ(内緒)。野球人にとって、これ以上の「お宝」はない。おそらく…今も広島の実家にホーナーの相棒が眠っていると思われる。
話がそれたが、それほどの人気・実力を誇った助っ人クラスの「衝撃」と見出しを打たせてもらった以上…(?)やはりこの夜、もういっちょ魅せて欲しかった。
しかし、そうは問屋が卸さず…結果は四球、遊ゴロ併殺、見逃し三振…。九回は右前打を放ったものの、14連敗中で弱り切っていたヤクルトを叩き切れなかった。
ホーナーの衝撃弾を見せつけられた一戦で遊撃スタメンだった平田勝男(現チーフ兼守備走塁コーチ)は言う。「バットにボールが当たる音が他とは全く違ったよ。ホーナーとパンダを比べるのはちょっとな…。でも、きょうの打撃を見ても、適応できそうだよ」。
ロジャースの愛称が「パンダ」と聞いて、三浦知良の言葉を思い出した。朝日新聞出版の『アエラスタイルマガジン』に昨年掲載されたインタビューで、当時49歳のカズは、自身が一部で「客寄せパンダ」と言われる件に触れ、独特のプライドをにじませていた。
「パンダじゃなきゃ、人は来ないですから。その役割は自負していますよ。僕は客寄せパンダで十分です。だって、普通の熊じゃ客は来ないんだもの。パンダだから見に来るんだもの…」
「ホーナー級」とまで言わないけれど、ロジャースには是非ともカズの言う「客寄せパンダ」になってもらいたい。神宮の連発でつかみはオッケー。だから、どうせなら「普通の」ではなく、ファンを沢山呼べる人気者に…。チーム本塁打が3ケタに届こうかというカープを追う為に、虎に不足している要素は誰もが分かる。「パンダじゃなきゃ」。そう期待されるパンダになれ…。=敬称略=