この「後悔」の先に…

 【6月18日】

 プロ野球とは結果論で語られるスポーツである。凡策でも吉と出ればマジックと称えられ、セオリーでも凶と出れば消極的だと叩かれる。監督はつらいよの世界だ。

 阪神は3週間に及んだ交流戦を完封負けで終えた。最終回は俊介の大飛球で盛り上がったけれど、やはり勝って締めたかった思いは残る。試合後、金本知憲は悔しそうだった。長い付き合いになるので、少しくらい胸中は読める(つもりだ)。現役時代なら間違いなく、近寄るなオーラを出していただろう。でも今は伝統チームを預かる立場。説明責任を自覚し、必ず言葉を発するようにしている。

 結果論を承知で確かめたいことがあった。1点差負けを悔やむとすれば、やはり初回の攻撃を振り返らなければならない。1番・高山俊、2番・上本博紀の連打で巡った無死一、二塁のチャンス。楽天の先発が岸孝之であることを考えれば、確実に走者を進め先制の足がかりにしたい局面。バントもありか…。記者席で興味深く見ていたが、金本が3番の中谷将大に命じたのはヒッティング。もちろん、最低限の役割も期待してのこと。けれど、結果は裏目に出た。

 中谷はカウント2-2からボール球の変化球に空を切り、三振。ヒットどころか、進塁打のスイングもさせてもらえなかった。結局1死一、二塁から4、5番も倒れて、無得点。結果で見れば、批判の対象になりうるタクトだった。

 ベンチ裏で監督会見を終えた金本を追って、聞いてみた。

 「正直、迷ったけれど、初回というのもあったし、上本に(バントで)送らせずに打たせた(右前打)から、あそこは一気にいきたかったという思いがあった」

 金本は引退後の3シーズン、本紙評論家を務めた。バックネット裏で隣の席に座り、金本の野球観を聞かせてもらった。度々口にしていたのは、采配はいつも状況、条件次第であろうという見解…。

 では、例えばこの日なら投手の条件はどうか。岸の防御率はパ・リーグ3位。楽天は松井裕樹をはじめ、リリーフ陣もしっかりしている。かたや、阪神の先発は未勝利のルーキー小野泰己。先制点の重要性は言うまでもない。

 一方で「一気にいきたい」攻撃側の条件も考えてみる。中谷を3番に据えたのは成長を認めてのこと。最近5試合の打率は・526と当たりまくっている。さらに言えば、彼は今季犠打の企図が一度もなかった。監督はこれらを踏まえ、瞬時に判断を下さなければならない。あの局面で中谷から快音が響けば文句なしだし、ダメなら最後まで尾を引きかねない。

 初回のタクトに後悔はあるか。直球で金本にそう聞いてみると、格好つけることなく言った。

 「やっぱり後悔はする、正直。こういう展開になればな…」

 勝っても負けても、夜はなかなか寝つけないという。阪神の監督とは、つらいものだ。これは僕の考えだけれど、金本にはこの先も結果論に縛られてほしくない。だって、この世界は責任を負う者の判断がすべてだから。=敬称略=

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