【藤川球児一問一答・1】「監督」ではなく「矢野さん」に伝えた

 阪神・藤川球児投手(40)が1日、西宮市内で引退発表会見に臨み、入団時に目標に掲げた3度目の優勝を約束した。一問一答は以下の通り。

  ◇  ◇

 -本人からひと言ごあいさつを。

 「シーズン中、これからタイガースが13連戦が始まるところで、こういう大儀な記者会見を開かせていただきますことに、まず球団の皆さんに感謝したいと思います」

 -まだシーズンが残っているが、22年間お疲れさまでした。

 「まだ2カ月半ありますから。気合入れて頑張りますので」

 -引退を決断された率直なお気持ちを。

 「そうですね。プロに入って一番最初に引退を考えたのが27歳ぐらいなんですけど。まあそういうポジションなんで、いつでもそういう気持ちでやっていましたけど。アメリカで解雇にもなりましたし。回数は多いですけど、去年終わった段階で、自分へのチャレンジに勝ったという自信ですよね。あとはもともとあるんですけど、チームに貢献すると。もう十分かなあ、チームにとって、タイガースにとって、いい選手、使える選手、強い心持ちで出てくれる選手があれば、もうそれでいいという思いでやってましたんで。必然というか。あと一年間体の準備が整わないというのは、プロとして失格ですからね。今、僕は満足しているところでございます」

 -最終的に引退を決断した時期は。

 「時期?毎日(笑)。8月…、伝えたのは8月ですね。それ以前に球団の方とお会いしてたら、それ以前だったかもしれないですし。ただ、どちらにしても今シーズン限りとは思いました」

 -決断した一番の理由は。

 「例えば6連戦があったとしてプロ野球なら。6連戦中で6試合全て登板する準備にあたるというのが僕のモットーなんですけど。それがもう3試合、4試合ぐらいにしてもアレなんですけど。この前、今年か。シーズンが始まって準備していく中で連投、2回連投で投げたことですら『アレ?』と思ったんですよね。これは体がおかしいと。例年思っていたんですけど『お迎えが近いぞ』というのは思ってたんですけど。まあ、前向きに倒れようという覚悟で常にやっていますが、いよいよ来たなあという感じでしたね」

 -右腕の状態は。

 「状態に関しては、あと2カ月半か。何とか監督が戦うために支えられるように、と。これは願ってはいないんですけど、1軍の選手、2軍の選手含めて、どうしても自分の力が必要になることもありえるということで、準備はしていきますけど。なので、まだ伏せておかなきゃいけないかなと。今シーズンに限っては、相手を倒す可能性のあるボールは投げられるというふうに考えましたので、今シーズン限りというところでお願いはしました」

 -シーズン中の引退発表。チームへの配慮などもあったのか。

 「当然、前々から引退を考える時には、球団の方と何年間も話し合ってきたんですよね。契約更改するたびに、その都度『シーズン途中で急に引退するようなことがあるかもしれない。自分の性格上』という話はしていました。ただ、やっていくうちに何とか最後までやり抜かなくてはいけないというのは、ユニホームを着ているからには、タイガースの誇りをみんなに見せつけなきゃいけない。周りに。それは感じていたんで。質問なんでしたっけ?(このタイミングでの引退発表について)ああ、そうかそうか。今の話の続きで言うと、コロナの関係性もありまして。僕はタイガースに入って常に満員のお客さんのいる、4万5000人以上入っている試合もある中で全国各地でですね、たくさんの応援を頂いて、これまで現役をやってきたわけなんですけど。この発表が遅れると、もしかして『自分のことを、自分のストレートを見たい!』って思ってくれているようなファンの方が一人でもいる場合に、球場に来るチャンスというのが今少ないので。(上限)5000人なんで。そういうことを考えているうちに、球団の方にもお願いして、できるだけ早い段階での発表を、と。あと引退を決めると、こういう人気球団ですから、どっかからそういう情報とか詮索が始まってしまいますので、即断即決という感じになりました」

 -引退を決めるにあたって相談した人は。

 「相談はしないです(笑)。周りとのバランスを考えた上で、自分なりに自分の思うチームへの最善の配慮をしたつもりです。例えばこれがアメリカならその日で解雇ですし。それがアメリカと日本の違いなんですけど。義理を果たして最後までやりたいなあというのがありまして…というところですね」

 -家族にはいつ伝えたのか。

 「家族にはね、いつも伝えてるし、僕はアメリカでも解雇になって。2回なったんかな?で、一度、その間に肘のドクターチェックで契約がなくなってというのもありまして。それで3回、独立リーグで4回。もう家族にしたら『もういいおっさんなんだからいいじゃない』ていう感じで。僕は常に言っていたのは、辞めた後、『この後の人生でもっとおもしろい人生を過ごそうぜ』っていうのが、ウチの家族と自分の周りの人間にもいつも言っていたんですけど。野球が全てじゃないんで。夢がかなってしまった後、また新しい夢を見つけるまでの間っていうのは非常に苦しいと思うんですよ、野球をやってた人は。だけどもう40歳にもなると、それ以上の夢っていうのはできたんで。もう家族も十分っていうふうに考えていると思います」

 -どちらかというと前向きなリアクションだったのか。

 「はい。妻とも話していたんですけど、『人生あと何年ぐらいかな、30年ぐらいかな』というところで、『今でも幸せなのに何しようか』って僕の中でプランがあって。それを話し掛けていると、それだけで幸せになれるというか。なのでそれが人生でしょう」

 -家族への感謝は。

 「あと2カ月、しっかりやり切ってから、周りの方々に感謝をしたい。たぶん時間はたくさんあると思うんで、たくさんの先輩方、先に辞めていった後輩もいますし、同僚もいますからね。そういう方々と今はコロナもありますけど、いいお酒を飲んで。のんびり話したいですよね」

 -矢野監督には話はしたか。

 「伝えましたけど、『矢野監督』には伝えてないですね。『矢野さん』に伝えましたね。監督と選手の立場があるし、僕はそれは言わないでいいし。監督としては、あと2カ月半で必要と思えば使ってくれたらいいし、力がなければ他の選手を使えばいいし、勝つためだけでいい。だけど、矢野さんには話しました。電話でしたけど言いましたよ。『監督としてではなく話を聞いてくれますか?』って。まどろっこしいですよね、実際」

 -その矢野さんは、どのような言葉を。

 「もう監督のままでしたよ、やっぱり。シーズン中に監督は監督の顔を、監督はユニホームを着ているんですよね。なので、ものすごく短い会話になりました。そういうもんです」

 -具体的な内容を。

 「やめておきましょう(笑)。ものすごく短いし、矢野さんと僕の話なんで。矢野監督の表情、矢野監督のままだったんで。やっぱり監督ですよ」

 -チームメートに報告は。

 「していないです。プロの世界で本当の話でいうと、チームワークっていうのは、ナイターなら(午後)6時から10時までの4時間ぐらいは、チームワークってものすごく必要ですよ。だけど、それ以外のところでは友達はいないですよ。辞めてから友達になる選手、僕はアメリカにも行って高知も見たけど、そんな友達いないですよ」

 -チームメートには引退後に話すのか。

 「そうですね。まあ、辞めていく人のことはどうでもいいですけど。勝つことだけを考えて。それだけですよ、はい」

 -22年間、どんな野球人生だったか。

 「何回も言いますけど、あと2カ月半あるので。自分なりに精いっぱいタイガースに貢献したいっていうのはあります。まあ、もういつ潰(つぶ)れてもいいっていう覚悟で25歳ぐらいからはやっていますので。僕、なかなか戦の話とかが好きで、粉骨砕身っていうそういう意味で…(言葉に詰まる)。(泣かずに)セーフですね(笑)」

 (その後、また約1分40秒言葉に詰まる)

 「前向きであることですね。前向きであり続けたところが、よかった。いろいろ考えたら、そこになりますよね。振り返らない。前を向くというのが、一番できたかなと。本当はそんなに強くない人間なんですけど。叱咤(しった)激励が多くてね、それが最高でした。それを覆すのが楽しかった。だから、前を向こうと思いました」

 -甲子園のファンの存在も大きかった。

 「家族ですね、家族。本当に一緒に相手を攻撃してくれる。ないのは寂しいですけどね」

 -甲子園のマウンドは特別だった。

 「球児っていう名前をもらったんで。非常におこがましいですけど、日本で何人、球児という名前の人がいるか分からない。僕にとっては、母親のような存在じゃないですかね」

 -甲子園のマウンドで、先発、中継ぎ、抑えを経験した。その中でも抑えのマウンドは特別だった。

 「あんまりそれは思わなかったですね。自分だけがそう思うのは失礼だし。僕は家族の、スタンドにいるファン(のため)にね。僕が生まれるもっと前からいる阪神ファンの人のために、やる義務があった。生え抜きとして。そこはプライドがあったかな。なので、自分たちが楽しむという発想もあるかもしれないけど、終わった後に楽しめばいい。やっている間は相手を倒すことで、自分の家族であるファンの人たちが球場で(喜んでくれるので)ね。ものすごい数の人たちですから。応援団の人たちにも頭が下がるし。なので、自分たちが楽しむのは最後。辞めた後に楽しみます」

 -どんな最後にしたい。

 「いつも最後だと思っていたので、全く悔いはないですけど。精いっぱいやります。だけど、選手たちに言いたいのは、辞めていく選手に負けるなと。負けるなと思うし、俺に負けているようじゃダメですよ。巨人に勝てない。それが願いです。もう譲ろうとしているわけですから」

 -ファンはリーグ優勝、日本一の最後のマウンドに、藤川にいてほしいと望んでいる。

 「ありがたいですね。だけど、勝負に勝つというのは、そんなに甘くない。勝つためには今ある戦力をどれだけ使って、監督が自由に立ち振る舞ってね。僕は戦国時代が好きなので。僕は途中で倒れるかもしれないけど、そういう先輩をいっぱい見てきたのでね…」

 (再び言葉に詰まる)

 「誰かがやってくれるし、その誰かが、みんなが俺がと思ってやってくれたらいい。タイガースのユニホームを着ている時点で、人はないんですよ。誰でもいい」

 -日米通算250セーブまであと5。

 「周りの方はたくさん言ってくれるんですけどね。本当に建前なしに言わせてもらうと、考えたことはないです。僕はもっと大きな財産を頂いたので。(記録を)達成された方、目標にされている選手というのは、僕には手の届かない大きな存在。その方たちとも十分に仲良く、楽しめますし。一緒にゴルフも行ける。それがあろうがなかろうが、何も変わらないです。自分は。だけど、目指している人がいて、それが生きがいだという人は、素晴らしい。僕はポジション的にたまたま、そういうふうに感じることができた。それよりも重要なことがありました」

 -財産とは。

 「タイガースが優勝することですよ。僕が入った時に、3回優勝すると言って、2回しかしていないので。22年で3回目のチャンスが来ている。別に自分がいようが、いまいが関係ないんです。だけど、エキスは入っていますから、後輩たちがやってくれる。僕は僕でもう一発、何とかと思っていますから。だから頑張りますよ、みんなと一緒に」

 -引退後のイメージは。

 「まだやめておきましょう。心には持っていますけど、もちろん40歳になったら持っています。だけど、今は毎日、全力でやっていきたい。最後までやっていきたいと思っています」

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