デイリースポーツ記者に「もう一度、甲子園を見たいね」と語っていたバッキー氏

 虎のレジェンド助っ人が、生まれ故郷ルイジアナで静かに旅立った。元阪神投手のジーン・バッキー氏が米国時間14日(日本時間15日未明)に死去した。82歳だった。デイリースポーツのMLB担当・小林信行記者がバッキー氏を悼んだ。

  ◇  ◇

 温かく、大きな手の感触と人懐っこい笑顔が今も忘れられない。

 閑静な住宅街に一人で暮らすバッキー氏を訪ねたのは6月12日。同氏の持つ球団助っ人通算最多勝記録100勝まで2勝に迫っていたメッセンジャーのことを聞くためだった。

 部屋の壁に掛けられた阪神時代の雄姿を収めた写真の数々。「これ何か分かりますか?」。ガラスケースに入った沢村賞の金盃を披露する顔は本当に誇らしげだった。

 同氏が感極まったのは、“手土産”に日本から送られてきた元チームメートの本紙評論家・小山正明氏の動画メッセージを見せた時。「ワンダフル!」と大喜びしたのも束の間、異国の地で苦楽を共にした時間を思い出したのだろうか。「アイタイネ…」と言って泣き始めたのだ。

 話はメッセンジャーのことだけにとどまらず、マイナー時代の苦労話、阪神との契約までの経緯、ノーヒッターの偉業、巨人戦での荒川コーチとの乱闘劇、亡き愛妻…と尽きなかった。

 子供5人、孫6人、ひ孫2人。インタビューの途中から三女のスザンヌさんも加わり、思い出話に花を咲かせた。とても82歳とは思えない鮮明な記憶。臨場感たっぷりの語り口についつい引き込まれ、気付いた時には2時間が過ぎていた。

 「10月に日本に行くかもしれない。もう一度、甲子園を見たいね」。

 その夢はついにかなわなかった。

 別れ際には声を震わせ、涙ながらに「また来てください」と言っていただいた。まるで旧友のように接してくれたやさしさがうれしかった。

 ジーンさん、ありがとうございました。安らかにお眠りください。

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