【金本阪神検証】球団として問われる「無形のモノ」の力
「検証・金本阪神3年目のVへ向けて」
「泥試合」とも評され、劣悪なコンディションでも注目されたCSファーストS・第2戦が行われた15日の、ある「ワンシーン」について触れたい。初戦を勝利した阪神の流れが、変わってしまったような1日のことだ。
練習中から強雨が降り注いだ中でのプレーボール。内野は田んぼのような状態で、野球が野球でなくなるような状況だったのは周知の通り。そんな1日のある瞬間のこと。練習中か試合中だったのか、あるDeNAの選手が、阪神の選手の、その環境下で試合をすることへの後ろ向きな思いを、耳にしたタイミングがあったという。
阪神がそういう気持ちでいるなら勝てる。
そのDeNAの選手は、そう強く思ったという。結果的にDeNAにCS最多の21安打、13得点を許して敗れたわけだが、ここで言いたいのはそれが敗因だとか、その選手がダメということではない。何気なく発したことが「心のスキ」と映り、相手の前向きな材料になってしまう怖さ。「気持ち」と評されるメンタル面の重要性を、そこに感じる。
金本監督は就任以降、「気持ち」の重要性を何度も説いてきた。「精神論とかじゃないけど気持ちは本当に大事だから」というように。17日のCS敗退後も精神面に触れて選手の成長を称えていた。
「今年は気持ちを前面に出してくれた」
「みんなの野球に対する執念だとか粘りだとか、それで2位になれたと思ってるし」
単純に昨年と比較すると、順位は4位から2位に。借金「18」から貯金「17」に。チームの得点数、打率、本塁打数も増加。そういった数字としてはっきり表れていること以上に、金本監督が今季の戦いで評価したのが精神面の成長だった。それがあったからこその、分かりやすい数字の上積みと言える。
目に見えて表れてくる成果の裏には、例えばここまで記したような「気持ち」であるとか、形や数字としては表現しにくい「無形のモノ」の存在がある。やはり来季も、そういったことがチームとして、球団としての課題となるのではないか。
18日のオーナー報告の会見で、今季の誤算を問われた金本監督は、少しためらいながらも、外国人補強の失敗について言及した。
なぜか「全権委任」されていると思われている節のある指揮官だが、決してそういう訳ではない。球団として、今年以上に同じ方向を向いて一つになれるかどうか。それぞれが覚悟を固めきれるかどうか。「無形のモノ」でもある「球団力」。来季の優勝を狙う上で、より問われるポイントになるに違いない。=おわり=