【緊急連載3】王様メッセを止められず

 「熱くなれなかった和田野球(3)」

 いつしか阪神投手陣の中でメッセンジャーは王様と呼ばれるようになった。中4日、中5日もいとわずとにかく投げまくった。これが勝利につながれば良いが、負け数ばかりが増えれば自然、不満の火種となっていった。

 キャンプから投手陣の課題は大きく分けて二つ。一つは先発5、6番手の確立。もう一つは安藤、福原に次ぐリリーフの育成だった。

 先発陣の課題は克服されることなく開幕を迎えた。ここに「短い間隔で投げたい」というメッセンジャーの意向は渡りに舟。首脳陣は登板間隔を詰めて先発させる道を選んだ。結果は出なかった。別表の通り中5日は13試合で3勝8敗と大きく負け越した。防御率も登板間隔別ではもっとも悪い数字が残った。それでも投げ続けた。

 「だれもメッセンジャーを止められない。王様だから」

 投手陣からはこんな声が聞かれるようになった。“王様”中心ローテはほかの先発投手の間隔変更も強いた。リリーフへの負担も増える。中4日の先発となれば球数の制限もあり、完投は期待できないからだ。投球回数などのインセンティブを稼ぐためではないのかといぶかる声まであふれ出した。やがて、不幸な結末を呼ぶことになる。首位争いが佳境となった9月、安藤、福原の両ベテランに明らかに疲労の色が見え、打ち込まれるようになったのだ。メッセンジャーの完投数は『0』だ。

 ローテーションの組み替えは首脳陣の勝負手だった。優勝を争う最大のライバルを巨人とにらみ、巨人戦に合わせて自慢の4本柱をつぎ込んだ。藤浪の8試合を筆頭にメッセンジャー7試合、能見、岩田がそれぞれ4試合先発した。これ以外は横山と岩崎が1試合あるのみだ。結果は9勝16敗。勝負の3連戦と言われた8月18日からの3連戦はメッセンジャー、能見、藤浪で3タテを食らった。

 9月22日の東京ドームでは岩崎を巨人にプロ入り初めて先発させた。これを前に中西投手コーチは「巨人は初ものに弱いからな」と言った。左腕は期待通り6回1失点と好投した。巨人戦重視ローテは失敗に終わった。

 リリーフの育成は最後までできなかった。いや、リリーフに限らず若手投手の台頭は今季もならなかったと言った方がいいかもしれない。若手投手のチャンスは少ない。一度でも打たれれば2軍へUターン。相手打者だけでなく、味方ベンチのプレッシャーとも戦わなければならなかった。もちろん、プロである以上勝ち抜いてこそではあるが、出てこないならば、方針変更を模索するべきではなかったか。

 優勝を逃したのは投手陣の責任だけではない。セ・リーグ最低の得点に終わった打撃陣にも誤算はあった。(続く)

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