要介護認定がなくてもOK 自治体のシニア向けサービス「総合事業」とは? 家事や買い物などもサポート【社会福祉士が解説】

40代、会社員の坪井さん(仮名)は、最近70代後半になった実家の母親の足腰が弱ってきたことを心配していました。「親が元気なうちは何も介護サービスが使えないのは、なんだかもったいないな…」。そんな風に漠然とした不満と不安を抱えていた坪井さんが出会ったのが、要介護認定を受けていなくても利用できる自治体の「シニア向けサービス」でした。

40歳になると負担が始まる介護保険。「要介護や要支援の認定を受けるまでは、介護保険に関するサービスは使えない」と思っている人もいるかもしれません。実は、要介護認定を受けていない70~80代のシニア親世代が今すぐ使える、非常に実利的な仕組みが存在します。

■要介護・要支援じゃなくても利用できる「総合事業」の基礎知識 

介護保険制度には、要介護1~5の人が使う「介護給付」や、要支援1~2の人が使う「予防給付」のほかに、市区町村が主体となって取り組む「介護予防・日常生活支援総合事業(以下、総合事業)」という枠組みがあります。

この総合事業の最大の特徴は、要支援者や基本チェックリストにより支援が必要と判断された人が利用できる「介護予防・生活支援サービス事業」と、65歳以上の人を対象に、地域の体操教室や介護予防講座などを行う「一般介護予防事業」の2つで構成されている点です。

これらは「最近、少し物忘れが増えたかも」「階段の上り下りがおっくうになってきた」といった、本格的な介護の一歩手前の状態にある高齢者をサポートし、自立した生活を長く続けてもらうことを目的としています。地域包括支援センターや自治体の介護保険窓口で「基本チェックリスト」と呼ばれる25項目の質問票に回答し、基準に該当した場合は、必要なサービス利用の手続きへと進むことができます。

■要介護認定がなくても実際に活用した事例

坪井さんの母親は、要介護認定は受けていませんでしたが、地域包括支援センターの窓口で「基本チェックリスト」を実施したところ、運動機能の低下が認められ、法律上の「事業対象者」として認められました。母親が実際に利用しているメニューと毎月のコストは、以下の通りです。

◆通所型サービス(総合事業・第1号通所事業)

自己負担が月額 約1500円(所得に応じて1~3割の自己負担、一部自治体では定額制)で、週に1回、地域の健康増進施設に通い、理学療法士などの指導のもとでマシントレーニングや転倒予防のグループ体操を実施。

◆栄養・口腔ケア講座(一般介護予防事業)

自己負担額無料で、自治体が公民館で開催している、管理栄養士による低栄養予防の食事指導と、歯科衛生士による咀嚼・嚥下(えんげ)機能を保つための「お口の体操」講座に月2回参加。

金額や取り組みの内容については自治体ごとに差がありますので、お住まいの自治体の情報を確認してください。

坪井さんの母親は、月額約1500円の通所型サービスと、無料の栄養講座を組み合わせることで、「外出の機会」と「専門的な運動・栄養指導」を同時に手に入れることができました。

■他にも選べる!親の状態に合わせてカスタマイズできる予防サービス一覧

坪井さんの母親は「通所(運動)」と「無料講座(栄養・口腔)」を選びましたが、総合事業や一般介護予防事業には、高齢者の生活課題に合わせて他にも多様な選択肢が用意されています。

1.自宅での家事や買い物をサポートしてほしい場合

足腰が痛かったり動かしづらかったりする方が利用すると便利なのが、訪問型サービス(総合事業・第1号訪問事業)です。必要性が認められれば、重い食材の買い出しや、布団干し・掃除機がけなどのサポートが受けられます。

1回約45~60分、週1回の利用で、自己負担額が月額約1000~2000円前後です。

2.認知機能の低下を予防し、社会とのつながりを作りたい場合

「最近、物忘れが増えた」「定年退職や配偶者との死別後、自宅に閉じこもりがちで会話が減った」という方に向いているのが、認知症予防講座・コグニサイズ(運動と頭を使う課題を組み合わせたエクササイズ)教室(一般介護予防事業)です。

自治体によっては数百円のテキスト代が必要なことがありますが、原則無料で利用することが可能です。

3.自治体独自のユニークなサポート(地域格差・独自財源によるもの)

総合事業は市区町村が主体となって運営するため、自治体ごとに独自の工夫を凝らした民間連携サービスが利用できる場合があります。

例えば、有償ボランティアによる生活支援として、ワンコインで電球交換や庭の草取り、ゴミ出しのお手伝いや病院への付き添いなどを提供している自治体もあります。

また、自治体が開発したオリジナルの健康体操を近所の公園や集会場・公民館などで行うコミュニティを自主運営する活動などもあります。

千葉県柏市では、市民ボランティアが主体となって地域の高齢者のフレイルチェックを行う仕組みや、サポーターの養成講座「フレイルサポーター制度」、また、三重県名張市では、介護保険の枠外にある生活支援(ゴミ出しや草むしり等)をシルバー人材センターで支える「軽度生活援助事業」などが実施されています。

■早めの相談が将来の介護負担を軽くするきっかけになることも

さまざまなサービスを活用し始めた坪井さんの母親。外出や運動する機会が増え、足腰もしっかりしてきたことに加え、表情も一段と明るくなりました。坪井さん自身も「もっと早く利用すればよかった」と、一安心の様子です。

将来、介護状態が重度化してしまうと、住宅改修や施設入所、高額な介護サービスの自己負担などが発生し、経済的にも精神的にも大きなストレスになります。介護保険で利用できる「予防」の仕組みを知って健康寿命を伸ばし、あなたの資産と時間を守る方法を活用してみて下さい。

【監修】勝水健吾(かつみず・けんご)社会福祉士、産業カウンセラー、理学療法士 身体障がい者(HIV感染症)、精神障がい者(双極症2型)、セクシャルマイノリティ(ゲイ)の当事者。現在はオンラインカウンセリングサービスを提供する「勇者の部屋」代表。

(まいどなニュース/もくもくライターズ)

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