農家の前に置かれた野菜の袋、「ご自由にどうぞ」は社交辞令? 6袋中4袋持って帰ろうとしたら「非常識」と近所の人に怒られた【弁護士が解説】

中学生の息子2人を育てる40代専業主婦のAさんは、ある日近所の農家の前に「ご自由にどうぞ」と野菜が置かれているのを見つけました。農家さんが処分するくらいならと好意で置いてくれたのでしょう。物価高で食費が上がり頭を悩ませていたAさんは、「まだたくさん残っているし、多めにもらっていこう」と考え、置いてあった6袋のうち4袋を持ち帰ることに。

その時、ちょうど近所の人が通りがかり、Aさんの手元を見るなり眉をひそめました。そしてAさんは近所の人に「1人1袋に決まっているでしょう。いくつも持って帰るなんて非常識だわ」と注意されてしまいます。Aさんは気まずい空気にいたたまれず、野菜をすべて置いて帰りました。

このように「ご自由にどうぞ」と書かれた配られている野菜を大量に持ち帰る行為は、法的に問題になるのでしょうか。専門家に話を聞きました。

■所有者側の目的によっては、窃盗罪や業務妨害罪が成立することもある

ー「ご自由にどうぞ」と表示されたものは、法的にはどのような扱いになりますか?

「ご自由にどうぞ」という表示は、所有者が所有権を手放す意思表示とみなされます。自由に持って行っても、原則としては、窃盗の罪に問われることはありません。

ー大量に持ち帰った場合、窃盗などに問われる可能性がありますか?

「1人1点まで」等の注意書きがあるにもかかわらず大量に持ち帰った場合、窃盗罪に問われる可能性があります。窃盗罪の場合、10年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金(刑法235条)を課されるおそれがあります。

一方、注意書きがない場合には、大量に持ち帰っても基本的には罪に問われることはありません。ただし、これはあくまで農家の野菜のような「不特定多数への無償提供」が明らかなケースの話です。

たとえばスーパーの試食コーナーなどは、できるだけたくさんの人に食べてもらい、購入を後押ししたり、アンケートをとったりする目的で用意されていることが状況から明らかです。

所有者側に「一定の範囲内で対象物を利用してもらう目的」があるものを大量に持ち帰る行為は、所有者の意思に反した財物の占有移転とみなされます。窃盗罪、場合によっては業務妨害罪(刑法233条)が成立し、3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金を求められるケースもあります。     

ーコーヒーショップのガムシロップや牛丼店の紅ショウガなどの無料サービスとの違いはありますか?

飲食店が「ご自由に」と提供している無料サービスを大量に持ち帰ると、数量制限の記載がなくても窃盗罪に問われるおそれがあります。

コーヒー店に置いてあるガムシロップや牛丼店の紅ショウガは、お店側が「飲食する際に必要な分だけご自由に使ってください」という意図で提供しているものです。飲食に必要な範囲を大幅に超えて持ち帰ると、お店の意思に反して財物を占有移転した、あるいは、店側の業務を妨害したとして罪に問われる可能性があります。

飲食店の無料サービスのように、一定の範囲内での数量制限が見てとれる場合は、周りに人がいなくてもルールを守りましょう。

◆古藤由佳 弁護士(弁護士法人・響)

「難しい法律の世界をやさしく、わかりやすく」をモットーに、借金や交通事故、労働問題・離婚・相続・消費者トラブルなど、民事事件から刑事事件まで幅広く多数手掛ける。FM NACK5『島田秀平と古藤由佳のこんな法律知っ手相』にレギュラー出演するほか、ニュース・情報番組などテレビ・新聞・雑誌等メディア出演も多数。

(まいどなニュース特約・長澤 芳子)

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