息子が浪人中、SNSに現れた“マウント系ママ友”「#赤門」「#努力は報われる」…母の胸に去来した“忘れていた悔しさ”

かつて「苦手だったママ友」が、思いがけずSNSのタイムラインに現れた…そんな出来事が、胸の奥にしまい込んでいた“暗い感情”を呼び起こしました。子どもが浪人中というナイーブな時期、華々しい成功を伝える投稿は、思った以上に心をざわつかせます。

■見たくなかった「再会」に乱れる心

ある晩、Bさん(東京都・50代)は、スマートフォンでSNSを眺めていました。タイムラインに表示されたのは、どこかで見たことのある女性の顔。記憶をたどるうちに思い出したのは、息子が小学校時代の同級生の母親・Dさんの姿でした。

Dさんは、いつもにこやかで社交的な印象でしたが、一方で相手の持ち物や美容院、子どもの習い事や塾の話題に敏感に反応し、柔らかな口調でさりげなく根掘り葉掘りと聞いてくる一面もありました。

「その大手塾、ちょっと体育会系っぽい感じなんだ?」

「うちは通信だけで十分かな。子どもが自分でやる力があるから」

そんな何気ないひと言に、相手より優位でありたいという思惑が透けて見えたことに、Bさんが気づくのに時間はかかりませんでした。

■面倒な人との付き合いから距離を置いた中高時代

Dさんの息子もやたらとプライドが高く、Bさんの息子に対して些細なことで張り合ってくる性格でした。テストの点や運動会の順位にもこだわる様子に、息子も「あいつ、めんどくさい」と距離を置くようになりました。

中学受験では、Bさんの息子が合格した学校を、Dさんの息子も受験しましたが、結果は不合格で滑り止めの学校に進学しました。しばらくは「中学はどう?」「大学受験の塾、どこにしたの?」といった探りのメールが来ていましたが、やがて連絡は途絶え、自然と疎遠になっていったのです。

■SNSは時空を超えてやってくる

時は流れ、Bさんの息子は難関大学を目指していましたが、残念ながら希望の結果には届かず、現在は浪人中。親子で落ち着かない日々を過ごすなか、Bさんのタイムラインに見覚えのある写真が表示されました。

画面に映っていたのは、満面の笑みを浮かべるDさんと息子さん。「#やっぱり努力は報われる」「#赤門」「#五月祭」「#息子は夢を叶えた」といったハッシュタグが添えられ、背景には東大の学園祭らしき風景が写っています。

画面を見つめるBさんの手が止まりました。まるで時空がゆがむように、過去にDさんから受けた「うちの子はこんなもんじゃないのよ」という言葉がフラッシュバックし、胸に重くのしかかってきたのです。

■「うちはうち、よそはよそ」は、簡単なようで難しい

SNSは、他人のハイライトだけが切り取られる場所だと、Bさんも頭では理解しています。それでも、「Dさんには負けたくなかった」「自分だって頑張ってきたのに」といった感情がふと湧き上がってきます。

Dさんは、かつて表面上はにこやかでも、常にどこかで優越感をにじませていました。インスタグラムの一枚の写真が、その過去の記憶を一気に呼び起こし、「うちはうち、よそはよそ」と自分に言い聞かせるのが、いつもよりずっと難しく感じられたのです。

「私は、Dさんの息子の成功を喜べない、心の狭い人間なのだろうか。Dさんの息子の成功は素直にうれしい。しかし、Dさんだけはどうしても認めたくない」

これが、Bさんの率直な気持ちでした。過去の積み重ねがあるからこそ、その感情が簡単に消えることはないのでした。

※文中のハッシュタグは、個人が特定されないよう一部加工しています。

(まいどなニュース特約・松波 穂乃圭)

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