下半身が麻痺して里親が見つからない小さな白猫 介助を決心した飼い主「お世話をさせてもらう気持ち」で、今は仲良く幸せに

■下半身麻痺の猫

あんこちゃん(5歳・メス)は、下半身が麻痺していた。熊本市愛護センターに収容されていたが、センターでは障がいのある猫の譲渡は難しく、里親が決まらないため、熊本県の保護団体が引き出したという。

大阪府に住む智さんは、何度もその保護団体から猫を譲渡してもらっていて、ブログも見ていたので、あんこちゃんのことを遠くから見守っていた。「迎えてあげたい」という気持ちと「いいご縁がありますように」と願う気持ちが交錯したが、当時、智さんは、おとめちゃんと大福ちゃんという猫の里親になったばかりで、その子たちを最後にすると決めていたこともあり、あんこちゃん迎える決断をするには至らなかった。

「あんこは下半身が全く動かせないので、圧迫排尿をして尿を出さなければなリませんでした。でも、そういう介助はしたことがないので自信がなく、悩みに悩んでいました。簡単に見に行ける距離でもありませんし、悶々としていました」

■一目会うために大阪から福岡へ

そうこうしていたら、福岡県でハンデのある猫たちの譲渡会「パニャリンピック」が開催されることになり、智さんは、あんこちゃんも出るということを知った。

「どうしても会いたくて、仕事を休んで福岡まで会いに行きました。あんこは怖がって、逃げて隠れてしまいました。小さくて、体重は2kgほど。怖がって固まっていましたが、抱っこすると鼻をぺろぺろ舐めてくれました」

智さんはズキュンとしたが、それでも決心がつかなかった。しかし、一度会ってしまうと思いは募るばかり。それから1ヶ月後、里親になる決心をしたという。

■圧迫排尿、介助しようとすると鳴き叫ぶ

2017年12月9日、智さんはあんこちゃんを迎えた。少し脚にハンデのある銀ちゃんという先住猫のお腹を触って圧迫排尿のイメージトレーニングをしていたが、智さんは冷や汗が出るほど緊張したという。

「力加減が分からず、尿を出しきれず膀胱炎などのトラブルを起こしたらどうしようと思ったのです。かかりつけ医にも通って、おしっこを出せているかチェックしてもらい、お腹の状態を手に叩き込みました。1週間ほどで獣医さんも『これだけ出せていたら大丈夫』と言ってくれました」

ただ、あんこちゃんは排泄の世話をしようとすると鳴き叫んで怒った。思いっきり文句を言われると、「私のやり方が悪いのか」とへこんだが、保護団体の代表に相談すると、「いつもそうだから気にしないで」と言われ、安心したという。

■恋焦がれた子と一緒に暮らせて嬉しい

その後もあんこちゃんは、先天性の横隔膜ヘルニアを発症したり、貧血が進んでごはんを食べられなくなったりした。特に貧血は辛そうで、呼吸をするのも苦しそうだったり気分が悪くてよだれを垂らしたりした。

「あんこの次に迎えた花丸の血を輸血すると一時回復したのですが、それも時間稼ぎだと言われました。毎日、『助けてくれ』と祈るような気持ちでした。あの頃のことは、今思い出しても苦しくなります」

あんこちゃんは一命を取り留めた。すっかりあんこちゃんの圧迫排尿にも慣れた智さん。

「あんこを引き取るまでに1年かかりましたが、恋焦がれた子と一緒に暮らせることを本当に嬉しく思います。あんこは小柄で体力もあまりありません。でも、ハンデをものともせず暮らしています。快適に過ごせるようお世話をさせてもらう、そんな気持ちで毎日接しています」

あんこちゃんを大阪まで連れてきてくれたボランティアは、別れ際あんこちゃんに「あかんかったら帰っておいで」と声をかけたそうだ。智さんは、その言葉に愛情の深さを感じたという。

(まいどなニュース特約・渡辺 陽)

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