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悲しい過去をもつ犬たちと、障害ある人たちが支えあう 「保護犬」がスタッフのグループホーム

兵庫県尼崎市に、保護犬も一緒に暮らす障害者グループホームができたのは2019年4月。代表の近藤繭さんが関東にあった施設を参考に、看護師としての資格を生かしながら、殺処分されるワンコを少しでも救えるのではと、保護犬と一緒に暮らすホームわんこを設立。当時は関西で初の試みでした。

障害者グループホームとは、知的障害や精神障害、身体障害などなんらかの障害により日常生活にサポートがいる方々が、共同生活を行う住居です。地域の中で暮らしながら、世話人や生活支援員と呼ばれるスタッフが、その方々の障害に合わせて、食事や入浴などの生活援助や相談支援を行い、自立した生活が送れるようになることを目的としています。

ホームわんこは現在、女性棟2棟、男性棟1棟を運営。2、3階建ての住宅で各ホームとも個室が4室あります。個室以外はすべて共有スペースとなり、いわゆるシェアハウスのような造り。すべてのホームに保護犬スタッフがいて、共有のリビングやキッチンで過ごす中、利用者さんのコミュニケーションに一役かっているようです。

■保護犬をお世話することでうまれるコミュニケーション

現在ホームわんこに入居されている方は、10代から60代まで年齢もさまざま。障害も統合失調症やパニック障害、自閉症や知的障害などをもたれた方が入居されています。利用者さんとわんこたちは、どのような関係を築いているのでしょう。

初めから「わんこがいるから入居したい」と思われている人ばかりではないようです。「犬がいてもいいかな」という思いで入居された方もいます。しかし、ホームわんこで生活していくうちに、遠くからわんこを見ていた利用者さんも少しずつ距離が近くなっていくようです。

わんこに触るようになったり、スタッフと一緒にわんこの散歩をしたり、散歩から戻ったわんこにご飯の準備をしてあげたり。言われるわけでもなく、各自で役割を決め、自発的に行動されるようになってくる方もいるとか。自立支援を行う中で、自発的に役割を決め行動できるという事は、わんこたちがいい変化をあたえてくれているようですね。

仕事に行かれるときも帰ってきたときも、スタッフではなく一番はわんこに挨拶をされるそうです。なによりも、スタッフに見せる表情とわんこに見せる表情は違うとか。スタッフの方々も、あまりにいい表情なので驚くことも。わんこたちが利用者さんにとって、かけがえのない存在になっているということは間違いないようです。

■ホームわんこ1のスタッフわんこ

取材でうかがったホームわんこ1のスタッフとして働くわんこは、ハナちゃん、はるちゃん、フーちゃんの総勢3頭。グループホームスタッフと利用者さんに、お世話してもらいながら暮らしています。3頭とも元は子ども産むための繁殖犬で、別々の所から保護されたわんこです。それぞれのわんこについて、ホームに来た時の状況を代表の近藤さんから聞きました。

   ◇   ◇

ハナちゃんはホームに一番初めに来た子です。ホームにきたときの推定年齢は5歳、今年で8歳になります。経緯ははっきりわかりませんが、おなかの手術後の傷から血が出ていて、皮膚の状態も悪かったです。後ろ足もあまり立たず、目も合わせてくれない、人から逃げ回っておびえている感じでした。

スタッフや利用者さんたちと暮らす中で、少しずつ人に関心が出てきたようです。今では一番の甘えん坊で、常に抱っこ抱っこという感じで、人が大好きになりました。

はるちゃんがホームに来た時も、同じ年ですね。推定年齢5歳の時にホームでひきとり、今年で8歳。繁殖引退後に一度は他の里親さんにひきとられたんですが、その方の事情でお世話が難しくなったということで、ホームわんこでひきとりました。来たときは鼻の上をダニが何匹か横断しているような状態でした。

当初は特に男の人を見たり、前から近づこうとすると、驚いて噛んでしまうことがありました。ボランティアのトレーナーさんに訓練してもらったりもしています。今でも時々その片鱗はでますが、スタッフには吠えたりしても、不思議と利用者さんには吠えたり噛んだりしません。抱っこは大好きで、はなちゃんが膝にのると、はるちゃんも乗らないといけないようで、だいたい2頭膝にのせることになります。はるちゃんも甘えん坊なんですよ。

初めの2頭は個人の方からでしたが、フーちゃんは保護団体さんからひきとりました。ホームわんこに来たときは、推定年齢5歳。今年で7歳になります。聞いた話では、保護した時の状態はかなりひどかったようです。痩せていて、歯もグラグラしていました。

表情は寂しそうで、甘えることもなかったですね。この頃は、はなちゃんたちの行動をみて覚えてきたのか、甘えてくれるようになりました。一番、マイペースで寝ている時間も多いですけど、寝ながらでもよく寝言のような声をだすので存在感があります。

   ◇   ◇

3頭とも悲しい過去をもっていますが、人とかかわる中で愛情を知り、安心して甘えることが出来るようになったようですね。

■みんなをひとつにした初めてのお別れ…車いすのちびちゃん

ホームわんこでは、初めてのお別れとなったチビちゃん。チビちゃんは保護団体より2019年7月に、12歳という年齢でホームわんこに引き取られました。もともとの飼い主さんが高齢であり、入院したため飼育困難となったわんこです。

わんこの12歳といえば、シニア犬といわれる世代です。チビちゃんは10月頃より足に力が入らず歩けなくなりました。そこで、利用者さんとスタッフで相談し車いすを作成。いったんはその車いすを使い、また歩けるまでに。しかし残念ながら、2021年2月天国へ旅立つこととなりました。

利用者さんも一緒にお葬式をして、チビちゃんへ手紙を書き棺にいれたそうです。そして、お骨を拾い見送りました。その時のことを代表の近藤さんは「言葉にうまくできないですけど、みんながまとまったというか、本当の家族のように感じた瞬間でした」と振り返られました。まさに、わんこがつないだ縁のような気がしてなりません。

(看護師ライター・mie)

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