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高級ブランドに成長した「刺繍おしぼり」が切り開く未来 おしぼりの大量生産、大量消費、廃棄の課題に一石投じる

飲食店に行ったとき、何気なく使っている「おしぼり」。これに特別な思い入れを持っている人は、あまりいないだろう。では、これに美しい「刺繍」が施されていたら?

上質な字で書かれた店の名前や、四季折々の花鳥風月、かわいいキャラクター…。村口義之さんは、鮮やかな色で彩られている「刺繍おしぼり」を独自に開発し、レンタル提供している。 

かつて、刺繍のない通常のおしぼりレンタルを行っていた村口さん。飲食店におしぼりを貸し、使用済みのものを回収し、洗浄・消毒後にまたレンタルする…という一般的な「貸しおしぼり業」を営んできた。しかし、ある疑問が発端となって、刺繍おしぼりのアイデアが生まれたという。

「おしぼりは、レンタルを繰り返して25回ほど使用できるとされています。しかし、使い方によっては汚れが落ちなかったり、掃除に使われてしまったり、ボロボロになったりして、全体の10~20%がすぐに廃棄になってしまうのです。もったいないですよね」 

おしぼりの無茶な扱われ方と、大量のロス。おまけに、おしぼりは熾烈な価格競争の世界だ。質よりも低価格なものばかり売れる傾向がある。それは「おしぼりの世間的な価値の低さ」によるものだと村口さんは感じた。


ちょうどタイミングよく、手ぬぐいブランド「永楽屋」の手ぬぐいを手に取る機会に恵まれた。折り畳まれた布を開いて広がる、素晴らしい刺繍と色とりどりの世界…。「これをおしぼりで実現できたら」と考えたという。

刺繍を施すのは、ブラザー工業のミシン「PR1050X」。写真やイラストのデータを取り込み、それに沿って自動で刺繍を行う高精度なミシンだ。

またデザインだけでなく、演出にもこだわる。誕生日専用の刺繍や、組紐のついた木箱など。何気なく使っていたはずのおしぼりが、食事をより楽しませるツールになっている。

刺繍おしぼりは、大阪・北新地の名店や、京都・祇園のミシュラン三つ星店などにレンタル。「自分はただのおしぼり屋ではないと思っている」と村口さん。「エンタテインメントを届ける」をモットーにしているといい、「高級ブランドのようなおしぼりを手がけることで、お客様が喜ぶだけでなく、飲食店も大切に扱うようになります」と話す。おしぼりの廃棄は1%程度に減ったという。

村口さんは2021年12月、大阪市淀川区に「刺繍おしぼりLABO」をオープンした。ここでは刺繍おしぼりが見られるほか、実際に使用しているミシンの展示や、デザインデータの作成も可能。3Dファントムも施されるなど、まさにエンタテインメント色を打ち出した情報発信基地になりそうだ。

「大量生産・大量消費のおしぼりに価値をつけて、世界のスタンダードにしていきたい。そこから食を楽しんだり、LABOで人と人をつなげていったり……たくさんの可能性を模索しています」

(まいどなニュース特約・桑田 萌)

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