大阪に来たら「USJ」→「海遊館」…無料の「渡船」で移動してみない!?意外に便利、非日常な2分の船旅

昔から「水の都」と呼ばれ、市街地を多くの川が流れる大阪。川の各所には古くから無料の渡船が設けられている。多くの人が訪れる有名観光地「USJ(ユニバーサルスタジオジャパン)」から「海遊館」への移動も、渡船を使えば意外に便利だ。大阪の街並みを川から眺めることができ、岸壁にやってきた海上自衛隊の艦艇に出会えることもある。ベイエリアの大阪観光に「非日常な2分ほどの船旅」加えてみてはいかがだろうか。

■今も船で川を渡るワケ

大阪市西部・大阪湾に近いエリアにある港区と大正区には、渡船が8航路運行されている。市が管理・運営していて無料で人と自転車が乗船できる。昭和10年頃の最盛期には31カ所の渡船場があったという。

渡船が運行されているのは、貨物船や遊覧船など比較的大型の船が行き来する、橋を架けづらい川だ。架ける場合は船の邪魔をしないよう橋脚を高くする必要がある。車だったら橋のほうが便利でも、人と自転車はそうはいかない。高い橋脚を階段やスロープを使って上り下りせざるを得なくなるのだ。それならば待ち時間があっても船で渡るほうが便利だ。周辺住民にとって渡船は、今なお重要な交通インフラなのだ。

■海遊館とUSJをいっぺんに楽しめる便利なアクセス方法……天保山渡船場

天保山渡船場は安治川を挟んで、海遊館のある天保山(港区築港3丁目)とUSJに近い此花区桜島3丁目を結ぶ。運行ルートは400mで、8航路の中で最も長い。1日あたり平均の利用者は、最盛期の1967(昭和42)年には1700人を数えたが、年々減っていき2020(令和2年)度には603人になっているという。

それでも大阪を訪れる観光客にとって、海遊館とUSJを短い時間で移動できる貴重な交通手段だ。電車で移動しようと思ったら、JRゆめ咲線に乗って「桜島」駅から「西九条」まで移動し、環状線に乗り換えて「弁天町」へ。さらに大阪メトロに乗り換えて「大阪港」まで30分弱の大迂回を強いられる。しかも片道390円の運賃もかかる。しかし渡船ならば、乗船時間はたったの2分ほどだ。

かつてはインバウンドで賑わっていたUSJと海遊館。コロナ禍で海遊館周辺は閑散としているが、あの賑わいが再び戻る日は来るのだろうか。

天保山といえば、標高4.53mの「日本一低い山」として有名だった。江戸時代の天保2年から2年間かけて行われた浚渫工事で発生した捨土を盛り上げてできた山で、初めは標高20m近くあったようだ。だが幕末から明治にかけて砲台を建設するために削られたり、その後は地盤沈下が影響したりして次第に低くなり、とうとう日本でいちばん低い山になった。

ところが現在は「2番目に低い山」になっている。いま日本一低い山は、宮城県にある日和山だ。もともと標高6.05mあったが、2014年の調査で3mになっていることが判明した。東日本大震災の影響とみられている。

■地元民だから知っている艦艇見学の穴場スポット

渡船の乗り場に近い天保山岸壁では、自衛隊が広報活動の一環として海上自衛隊の艦艇を一般公開することがある。外から見るだけでなく、本物の艦艇に乗り込むこともできるため、岸壁の入り口には朝早くから長蛇の行列ができるほどの人気イベントだ。

だが、艦艇は海から見てこそ艦艇らしさを堪能できるもの。その穴場的なスポットが、じつは渡船である。USJのある桜島側の乗り場から、対岸の天保山岸壁に接岸している艦艇の全体が見える。出発時刻になったら乗船して、左舷に陣取ってカメラを用意しておく。走りだすとアングルが刻々と変わり、築港側に着く直前には艦艇を正面からとらえることもできるため、変化に富んだ写真が撮れるのだ。

画像は2018年5月20日に、護衛艦「かが」が一般公開されたときのもの。このスポットがあまり知られていないせいか、乗り場には筆者を含めて数人しかいなかった。

■工場萌え! パイプラインの機能美を撮影するツアーも……船町渡船場

あわせて特色ある渡船をもうひとつ紹介したい。大正区の南部、鶴町1丁目と船町1丁目の間にある木津川運河を結ぶ船町渡船場。岸壁間わずか75mは、8航路の中で最も短く、所要時間は30秒ほど。岸から離れてエンジンの回転が上がったと思ったら、もう対岸に着いている印象だ。

河川・渡船管理事務所から提供された資料によると、2020(令和2)年度の1日平均利用者は177人とある。船町渡船場の周囲には人家がなく、全体が工場地帯である。だから渡船の利用者も、ほとんどが工場で働く人たちだ。

昭和20年代後半から30年代には、対岸まで船を連ねて板を敷き、その上を歩いて渡ったこともあるという。川幅が狭いからこそできた方法だった。

ところで工場が集まる船町の魅力は、外観のデザインより機能を優先した機能美あふれる景色。いわゆる「工場萌え」ファンには絶好の撮影スポットになっていて、有志らによる撮影ツアーが行われることもあるという。とくに夜になると、パイプラインを照らす灯りが期せずしてライトアップとなり、工場の機能美を一層際立たせる。

   ◇   ◇

【アクセス】

▽天保山渡船場

・築港側(海遊館と天保山があるほう)/大阪市港区築港3丁目2-25

大阪メトロ中央線「大阪港駅」下車、北へ徒歩約10分。

・桜島側(USJがあるほう)/大阪市此花区桜島3丁目10-34

JRゆめ咲線「桜島駅」下車、南西へ徒歩約10分。

▽船町渡船場

・鶴町側/大阪市大正区鶴町1丁目16-61

大阪メトロ中央線「大正駅」から、大阪シティバス(鶴町四丁目行)「鶴町一丁目」下車、南へ徒歩約4分。

・船町側/大阪市大正区船町1丁目3-117

大阪メトロ中央線「大正駅」から、大阪シティバス(西船町行)「西船町」下車、北へ徒歩約4分。

※アクセスの情報は大阪市ホームページより

(まいどなニュース特約・平藤 清刀)

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