靴下の年間廃棄量がトン単位!?危機感を覚えた町工場の社長が前代未聞のブランドを立ち上げた

近年ますます増えるゴミによって、環境に悪影響が及んでいる。そこには、多くの産業廃棄物も加担しているという。「これではいけない」と立ち上がった靴下メーカーがある。奈良県広陵町にある「後藤(正)靴下工場」だ。

同社は「ZERO SOCKS」という靴下を開発。使い終えた後に土に埋めると、自然に還るという。「自然に還る」とは、どういうことか。普通、靴下に穴が開いたら、多くの人がゴミ箱に捨てるだろう。しかし「ZERO SOCKS」は、土に埋めると微生物が分解。廃棄を増やすのではなく、自然に循環させる。そんな靴下なのだ。

約70年にわたり靴下を作り続けてきた、後藤(正)靴下工場。同社の強みは、長年培ってきた経験や製法を支える徹底した職人ぶりにある。しかし、クオリティを徹底すればするほど、ある課題が生じたという。

「パッと見では気づきにくい汚れや違和感などが見つかると、ハードルの高い検品に引っかかり、それはボツになるんです。すると当然、廃棄になりますよね。しかも、その量は年間でトン単位。良いものを作りたい一心なのに、ゴミになる。その葛藤がとても辛いのです」

ボツになった素材は廃棄になるほか、他の製品として再利用されることも。しかし、後藤社長は「これは本当の意味でリサイクルといえるのか」と疑問に感じたという。

「再利用したとしても、それが使えなくなったときに結局ゴミになる。本質的に課題を解決できていないのでは、と思ったんです」

そんなとき、同社は「自然に還る糸」を手に入れた。ブラジル製のナイロン繊維「Amni Soul Eco®︎」という糸だ。

「この糸と、農薬・化学肥料不使用のオーガニックコットンで、人と環境に優しい靴下を作りたい。そうして『ZERO SOCKS』は生まれました」

開発には、環境への配慮を徹底的に意識した。廃棄予定だった食材を使用して染色をしたり、天然のゴムを使ったりすることで、余計な化学物質の使用を避けた。もちろん、肝心の履き心地にもこだわった。「とにかく柔らかい。ふんわりとした肌触りを好む方や、低刺激を求めている方などにおすすめです」

これまで同社は、アパレルブランドの委託で製品を作ってきた。「ZERO SOCKS」は初の自社ブランド。長年続く老舗による、決死の取り組みだと言える。そこまで力を注ぐ理由は何か。

「今は物が豊かですが、それ以上に廃棄が多すぎます。環境問題はもちろん、薄利多売の状態にも疑問を持っています。ものづくりに携わる一人として、靴下で現状を変えたい。その一心です」

現在、「ZERO SOCKS」はMakuakeで購入できる。販売期間終了後は、同社のECサイトで発売を予定している。

(まいどなニュース特約・桑田 萌)

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