「殿、まさかタイムスリップしてました?! 」浮世絵に「最初はグー」をするおじさん 驚きのツイートが話題

 「最初はグー」の発明は、志村けんじゃなくて歌川広重の可能性-。

 そんなツイートが先日投稿され、これまでに9.9万を超える「いいね」を集めるなど話題になっています。

 「最初はグー」といえば、昨年、新型コロナウイルス感染症で亡くなった志村けんさんが遺した、最も大きな“発明”の一つ。「日本じゃんけん協会」のHPによるとTV「8時だョ!全員集合」の収録終わりに飲みに行った際、支払いを決めるじゃんけんのタイミングがみんなベロベロで全然合わなかったため「最初はグー」にしようと提案。それを番組の中で使ったことで、一気に全国に広まった-といいます。

 ですが、ARTISTIAN(@Artistian_net)さんが投稿した、江戸時代の浮世絵師、歌川広重(1797~1858)の代表作「東海道五十三次」の「小田原」の左下には、酒匂川の渡しの前で、ふんどし姿でじゃんけんに興じているような4人のおじさんの姿が。その手は、確かに、全員「グー」です!

 この発見に、ユーザーたちは「この中の一人が志村けんの可能性」「志村ケンは死なず、次の時代にジャンプしただけなのかも知れない」「ダチョウ倶楽部に見えたw」「歌川広重の生まれ変わりが志村けんの可能性」「志村けんがタイムマシンで過去に行って広めた可能性」…と大盛り上がり。

 ARTISTIANさんに聞いてみました。

-面白いですね。いつ気付かれたのですか?

「この浮世絵は昨年のサントリー美術館の展示で撮影OKだったものです。そのときもこれは完全にジャンケンしているなぁとアップで撮影していました。その後、志村けんさんの訃報に触れ『“最初はグー”を広めたのは志村けん』と一時話題になっていたのが頭にあり、家でスマホで撮った写真を見返していた時につながった感じです」

-おじさんたちの表情も、楽しそうです。

「広重の描く小さなおじさんたちはとても可愛いので、鑑賞ポイントとしてオススメです」

-いつから浮世絵沼に?

「美術展は父親によく連れられて行っていたのですが、自分から観に行ったのは2008年のトーハクで行われた『対決』展です。浮世絵もその前後に興味を持っていたかと思いますが、何かひとつの作品がきっかけというより、当時の暮らしぶりや流行などの風俗に加え、案外今と変わらない人間の本質が描かれていて、生活に根差しているところに魅力を感じます。他の美術より身近に感じ取れるところが好きで、太田記念美術館を中心によく観に行くほか、2、3年前からは自分で買うようになり、手元で見る楽しさを覚えてしまいました」

-多くの方が想像をめぐらせていらっしゃいましたね。

「ほんの冗談めいたツイートが、ここまでの反響になるとは正直思っていなかったです。状況や会話がいろいろ想像できる絵だったので興味を引いたのかもしれません。この4人の中に志村けんがいるのでは?広重は未来人だったのでは?と自分にはない発想の反響もあったのが印象的でした。これがきっかけで浮世絵沼にハマる人が出てきてもらえれば幸いです」

 と話してくれました。

 ちなみに、日本じゃんけん協会によると、じゃんけんは英語圏では主に「Rock-paper-scissors(石-紙-ハサミ)」と呼ばれ、「世界じゃんけん協会」も存在。一方、日本のじゃんけんは史料が乏しいものの、「けん」は中国語の「拳」で、拳遊びの多くは江戸時代に日本に伝わったと言われています。江戸初期には出した指の数を言い当てる数拳が伝来し、日本独自の三すくみの要素を取り入れた虫拳、虎拳、狐拳、藤八拳などがブームになり、お座敷遊びの型なども生まれたといいます。

 さらに「大人の遊び」だった拳遊びが、一気に子どもを含めた全世代に広がったのも、実は「最初はグー」のおかげ。この発明を機に、後出し問題やタイミングのズレ問題が一気に解消されたのだそうです。

 件の絵の描写が「最初はグー」かはさておき、このおじさんたちの表情の、何とも楽しそうなこと!ホントに、「殿」かも知れないですね(笑)

◇  ◇

 ARTISTIANさんは仕事のかたわら、絵師のエピソードや墓所、史跡巡りなど、浮世絵を含む日本画鑑賞を楽しむためのホームページ「ARTISTIAN」を制作・運営しており、手元で見る細部の楽しさを記した記事「図録じゃ伝わらない浮世絵版画技法」も。ぜひ、沼への道しるべにいかがですか?

(まいどなニュース・広畑 千春)

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