戦国武将気分を味わわせてくれるのは…実は競馬の「引退馬」 テーマパークが馬たちのセカンドキャリアにひと役

 壮大なお城をバックに”戦国武将”気分を味わってはいかが?和のテーマパーク「ともいきの国 伊勢忍者キングダム」(伊勢市)は競走馬としての役目を終えた引退馬のセカンドキャリア支援に賛同。乗用馬として受け入れ、リトレーニングを行っている。その一方で乗馬やポニーとのふれあい体験を実施。引退馬の中には兵庫ダービーもいた。3月8日の再オープンを前に、のぞいてみた。

 競走馬としての役目を終えた引退馬のセカンドキャリアをサポートする動きは年々高まっている。日本中央競馬会(JRA)は17年12月に「引退競走馬に関する検討委員会」を設置。シェルターやリトレーニングする団体、施設に奨励金を交付している。

 とはいえ、まだまだ十分とは言えない。競走馬となるサラブレッドは年間約7000頭生産され、中央・地方から2、3歳でデビュー。しかし、その多くが5、6歳までに競走馬登録を抹消される。

 昨年、JRAではアーモンドアイが史上最多9冠を達成し、クロノジェネシスが宝塚記念、有馬記念のグランプリを連覇。さらにコントレイル、デアリングタクトの牡牝無敗三冠という歴史的偉業に沸いた。しかし、光があれば影もある…というのが現実だ。

 競走馬の寿命は25年ほど。えさ代や削蹄、世話をする人の人件費を含めた飼育費は毎月10万円以上はかかる。単純に5歳で引退したとしても20年で2400万円以上が必要な計算。もちろん、500キロを超える大型動物なのでそれなりのスペースも必要だ。そんな理由から引退馬の多くは行方不明、いや、殺処分され、残念ながらそれが暗黙の了解ともなっている。

 そんな中、救いの手をさしのべた団体のひとつが伊勢忍者キングダムだった。かつて武術道場だった部分を厩舎に大改修。関東の有名乗馬クラブで経験を積んだ女性スタッフらを受け入れ、体制を整えた。

 現在、所有しているのは4頭で内訳はバラエティー豊か。現役時ナンベーサンと名づけられ、JRAで2勝。いまはハクと呼ばれる芦毛のサラブレッドはすっかり白くなっており、リアル白馬の王子様としてエース級の働きをしている。

 カムイは日本乗系種で乗馬担当。足のしましまがチャームポイント。ポニョは日本ミニチュアホース種で、もふもふ。ニンジンが大好きで、こちらはふれあい担当。伊勢忍者キングダムのアイドルだそうだ。

 そして、もう1頭、なかなか精悍な顔つきで、好馬体のサラブレッドがいるではないか。聞けば、名前はコーナスフロリダと言い、かつては園田競馬に所属。2018年兵庫ダービー、西日本ダービーを制覇し、ダービーグランプリで3着という好成績を残していた。

 こちらは滋賀県栗東市にあるホースシェルター「TCCセラピーパーク」から昨夏に受託したもの。左前繋深屈腱炎を発症し引退を余儀なくされたが、賞金も3000万円以上稼いでおり、精かんなのもなるほど納得。ただ、現役時代は走ること、勝つことを徹底的に教え込まれており、乗用馬としては半人前で現在、悪戦苦闘しながら再調教中。担当者によると「人間大好き、ちょっとおっちょこちょい」だそう。

 ここ伊勢忍者キングダムが他の乗馬クラブや乗馬施設と違うのは、戦国テーマパーク内にあることからコスプレを楽しめるところだろう。このロケーションの中で騎乗すれば、さながら戦国武将、あるいは暴れん坊将軍になった気分に浸れる。

 伊勢忍者キングダムでは将来、三重県下の別の場所にも乗馬場を増設し、受け入れる頭数も増やし、自然とふれあえる本格的なトレイルを始めたい考え。武術家としてヨーロッパで暮らし、ウエスタン乗馬の経験もある横山雅始代表は「日本の競馬産業は馬券売り上げでは今や世界一の規模を誇りますが、馬との関係性は希薄。馬にふれあう機会を設け、それによって1頭でも多くの馬たちを助けたい」と話している。

 施設は緊急事態宣言を受け、休園していたが3月8日から再開する。

(まいどなニュース特約・山本 智行)

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