鈴のような美声で鳴いていたので、敬意を込めて名前は「美鈴さん」に 成猫と少しずつ距離を縮める日々

野良猫だった美鈴さんは、TNRされる予定だったが動物病院で人に懐いたので里親を探すことになった。成猫の保護猫を探していた石川さんに出会い、一緒に暮らすことになったが、最初は警戒心をむき出しにして、高い鈴の音のような鳴き声で鳴き続けた。

■完全犬派だったが猫の魅力を知る

東京都に住む石川さんが一緒に暮らす猫の美鈴さんは野良猫だった。2016年5月、TNRをするために捕獲されたのだが、妊娠していた。残念ながら子猫たちは助けられなかったが、美鈴さんは元気だったので不妊手術を受け、しばらく動物病院に入院した。当初、回復したらリリースする予定だったが、動物病院のスタッフや獣医師に懐いたので、シェルターに移って里親を探すことになったという。推定年齢は1歳くらいだった。

その頃、石川さんも猫を探し始めていた。石川さんは幼いころから動物が好きだったが、ペット禁止のマンションに住んでいたため、ハムスターや熱帯魚を飼っていた。大学では犬の行動学やトレーニング理論を学び、犬のしつけ教室も運営した。

「犬派だったのですが、ペット関係の仕事に就いたのを機に猫も人と信頼関係を結べると知って、猫との暮らしを夢見るようになりました」

■私を連れて帰って

30代になって経済的にも余裕が出てきたので、ペットを飼える住宅に引っ越したのを機にいよいよ猫との暮らしを実現することに。ただ、一人暮らしの場合、譲渡を拒まれることが多いことを知っていた石川さんは、保護活動を始めた知人に相談。美鈴さんが暮らすシェルターを紹介してもらった。

「もともと保護活動に興味を持っていたため、保護猫を迎えると決めていました。一人暮らしで日中留守にすることを考え、成猫を探すことにしました」

始めはシェルターのサイトに掲載されていた里親募集情報で写真を目にした。実際に会ってみると、他の猫に圧倒されているようですぐには寄ってこなかったが、合間を見て、石川さんの足元にすり~っと寄り添ってきた。

「まるで『私を連れて帰って!』と言っているようで、とても嬉しかったです。私は猫を選ぶ立場にあったのですが、この子から選ばれたという感じがしました」

■ペットというより同居人

2016年8月、自宅までシェルターの人が美鈴さんを連れてきてくれた。落ち着けるように、とシェルターで使用していたBOXなどを持ってきてくれたが、美鈴さんは一目散にベッド下の奥深くへ…。姿も見えず、声も聞こえなかった。ベッドからすぐの場所にご飯やお水を用意しましたが、とうとうその日は気配を消したままだった。

2日目になると、今度は、姿を消したまま、ひたすら鳴いていた。高く可愛らしい声だったが、喉が枯れるのではないかと思うほど鳴き続けた。

「声が鈴のようにとてもきれいで可愛らしく、かつ美人だったので、『美しい鈴のような声の美人さん』ということで、美鈴さんと名付けた。ペットというよりも同居人という感覚があり、そしてこれまで外で立派に生き抜いてきたことに敬意を持って、「美鈴さん」と呼ぶことにした。

■少しずつ距離が縮まる喜び

その後、日を重ねるごとに少しずつ、美鈴さんはベッドの奥から顔をのぞかせるようになり、一瞬だけベッドから出てくるようになり、そのうち部屋に出てくるようになり…長い時間をかけて段々と慣れてくれた。ただ、家庭で暮らしたことがないので、石川さんがドアを閉めたり、キッチンでカチャンと音を立てたり、何気ない生活音にも毎回ベッドの下に逃げ帰るという生活。暮らしに慣れるのには随分と時間を要した。

「子猫ならもっとすんなり慣れてくれたのだと思います。でも、小さなことにビクつきながらも、少しずつ心を許してくれる姿がとても愛おしかったです」

今ではすっかり甘えん坊になった美鈴さん。目が合う度に「にゃっ」と話しかけてきたり、テレワーク中の石川さんの邪魔をしたりする。

2年、3年と一緒に暮らすうち、抱っこを嫌がらなくなったり、自分から膝の上に乗ってくるようになったり、少しずつ少しずつ距離が縮まってきた。抱っこしたまま膝の上で寝息を立ててくれた時は、とても嬉しかったという。石川さんは、ゆっくりとした距離の縮まり方に喜びを感じている。

(まいどなニュース特約・渡辺 陽)

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