池袋暴走事故で一転して「車に異常」と無罪主張の飯塚被告に「反社以下」と小川泰平氏が苦言

 昨年4月、東京・池袋で乗用車が暴走し11人が死傷した事故の初公判で、過失運転致死傷罪に問われた旧通産省工業技術院の元院長、飯塚幸三被告(89)が「車に異常が生じた」として自身の無罪を主張したことを受け、元神奈川県警刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏は9日、当サイトの取材に対し、自身の運転ミスを認めて証拠隠滅の恐れもないことから逮捕されなかった経緯を踏まえ、その供述を否認して無罪を主張する被告の姿勢を「反社以下」と糾弾した。

 起訴状によると、飯塚被告は運転中に自転車で青信号の横断歩道を渡っていた松永真菜さん(当時31)と長女の莉子ちゃん(同3)をはねて死亡させ、通行人ら9人を負傷させた。事故発生時には時速約60キロから約96キロに急加速していた。同被告は事故後の事情聴取で「パニック状態となり、アクセルとブレーキを踏み間違えたかもしれない」などと運転操作を誤った可能性を認めていた。

 ところが、飯塚被告は8日の初公判で一転して起訴内容を否認。同被告は「アクセルペダルを踏み続けたことはないと記憶している。車に何らかの異常が生じ、暴走した疑いがある」と、自身には責任がなく、運転車両の不具合を理由に無罪を主張した。

 小川氏は「飯塚被告が逮捕されなかったのは、ネット等で指摘されている『上級国民』『元官僚だから』ということではない。一つは、本人もケガをして入院しなければならなくなったということ。もう一つは、退院後の事情聴取において、事実を認めて反省し、証拠隠滅や逃走の恐れがなかったということ。ところが、初公判ではそれまでの姿勢をひっくり返した。『自分の運転ミスではなく車の異常』として無罪を主張するなら、とんでもないこと。誰かに言わされたというより、それは本人の意志だと思う」と指摘した。

 その上で、小川氏は「この被告の態度は『反社以下』です。ヤクザであっても、取り調べで事実を認めれば公判でも認めるのが普通。被害者遺族の心情を考えるならば、事実を認めて謝罪する以外にない。それが初公判で180度違うことを主張するなど、私は同被告が『反社以下』の存在として怒りを覚えました」と自身の見解を示した。

 飯塚被告は初公判の法廷で妻と娘を亡くした遺族の松永拓也さん(34)に対して「心からおわび申し上げます」と謝罪したが、その後は起訴内容を否認して無罪を主張。公判後に会見した松永さんは「謝罪するのであれば罪を認めてほしかった」と話し、メディアでは「形式的な謝罪に過ぎず、自己保身のため」「被告には『人の心』がない」といった批判が相次いだ。

 同被告が主張した「車の異常」について、検察側は「車のアクセルとブレーキに故障の記録はない」「アクセルを踏み続けたことも記録されている」とし、1カ月前の点検でブレーキやアクセル機能に異常はなかったこと、後続車の運転手が同被告運転の車のブレーキランプを見ていないことから、ブレーキを踏んでいない可能性を指摘。小川氏は「検察によって『車のトラブルはなかった』という鑑定結果が出ている。車の不具合など、言い訳にもならない。無理があります」と付け加えた。

 小川氏は「もちろん、本人に否認する権利があるのも事実です。ですが、自分が『無罪』だとか本人が決めることではない。それは裁判所が判断することです」と説き、「次回の公判では被告がきちんと誠実に対応すべき。自分の見栄やプライドは事件とは別です。高齢であることも関係ない。言い訳にはならない。しっかりと罪と向き合い、心からの謝罪をすべきだと思う」と訴えた。

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