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里親先はゴミ屋敷だった! 「多頭飼育崩壊」を経験した元保護犬が感情を取り戻すまで

 元保護犬の元気君はかつてネグレクトに遭っていました。鹿児島・奄美大島で生まれ、生後2か月のとき、里親募集サイトを通じて兄弟犬の瑛太君と一緒に神戸の里親のもとへ。ところが、ゴミ屋敷のようなその家には他にもたくさんの犬や猫がいて、十分なお世話をしてもらえず。結局、9か月後に“多頭飼育崩壊”となり、神戸市動物管理センターへ持ち込まれました。それを知った鹿児島のボランティアさんが元気君と瑛太君を引き出し、2015年11月、改めて新しい家族を見つけるため、関西を拠点に活動する『犬の合宿所in高槻』にゆだねられたのです。

 最初の預りボランティア家族に「元気」という名前をもらいましたが、その性格と行動は「元気」とは程遠かったようです。“超”がつく怖がりで、特に大人の男性が苦手。そこで“リハビリ”のため送り込まれたのが、お父さんと大学生のラガーマン2人がいる溝渕家でした。

 元気君の第一印象を、お母さんのみどりさんは「無」と表現します。

「どこを見ているわけでもなく、いつもボンヤリ。表情がなくて感情が読み取れませんでした。ただ、何に対しても怯えていることは分かる。ごはんを食べるのも恐々という犬は初めてでしたね。安心してごはんを食べたことがなかったのかもしれません」(溝渕さん)

 尻尾はいつもお腹の下に収納。ビビション(恐怖からするオシッコ)するし、散歩はまるで“逃走”のよう。そんな元気君に対して、溝渕家では次のような接し方を徹底しました。

①ヒトからは近づかない
②話し掛けるときは少し離れたところから
③でもたくさん話し掛ける
④男性陣は元気君の前を横切るとき、ほふく前進。接点を持つときは腹ばいか寝転んで
⑤散歩はできるだけヒトや車の少ない道を
⑥グラウンドやドッグランで思い切り走らせてあげる
⑦「大丈夫」と言い続ける

 ①は無理に距離を縮めようとしないということ。③は「お風呂に入ってくるね」「洗濯物干してくるね」など何でもいいそうです。④は大人の男性が苦手な元気君の恐怖心をあおらないようにするため。⑥は体を動かすことで美味しくごはんを食べて、体も心も強くなってもらうのが狙い。⑦は恐怖でパニックになりそうなとき、背中から抱いて胸やお腹をなでながら「大丈夫」と言ってあげることを繰り返すと、次第に「大丈夫」という声掛けだけで安心するようになるそうです。

 こうしたことを地道に続けていると、元気君に少しずつ変化が見え始めました。「心の氷が溶けてきた」(溝渕さん)のです。画期的だったのは、溝渕さんが一人で夕食を食べていたときのこと。元気君が珍しく近づいてきました。

「お肉の匂いに反応したのか、『なに食べてるの? ボクも欲しい』とでも言いたげな顔で近づいてきたんです。うれしくてうれしくて、心の中でガッツポーズしました。お肉をあげると美味しそうに食べて『おかわり』って(笑)。もちろんあげましたよ」(溝渕さん)

 人間の食べ物をあげちゃいけない? そんなことを言っている場合ではありません。元気君が素晴らしい成長を見せてくれたのですから、それに応えなければ! 溝渕さんは翌日の昼食時にもお肉をあげて、続いてニンジンを…すると元気君はニンジンにオシッコをかけて、ベッドでふて寝したそうです(笑)。ここで「怒」の感情を出せたのも成長の証。その後はお父さんや息子さんの手からもごはんを食べられるようになり、「ごはんできたよ!」と言うと、ピョンピョン飛び跳ねるようになったと言います。

 元気君は今、里親募集会で出会ったやさしい家族と一緒に幸せに暮らしています。きっと、感情表現豊かな子になっていることでしょう。

(まいどなニュース特約・岡部 充代)

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