朗読グループがうちにやってくる! デジタルでなく「生の声」にこだわるプロ集団

 先月16日、大阪北野病院のプラナホールで朗らかな声で紡がれる物語が会場に響き渡った。そこで行われていたのは、1時間の朗読ライブだ。集う人々に物語を読み聞かせているのは、明るい赤の衣装を身にまとう女性グループ。傍らにはグランドピアノが設置され、物語の様子に合わせて音楽が奏でられる。

 この日語られた物語は、韓国のユニークな昔話「三年峠」や、小学生の初恋を描く「天国からの手紙」など、小学生の教材にも用いられている素朴で心温まる作品ばかりで、聴く者の耳に心地よく響く。

 彼女たちは、病院や教育機関、福祉施設などに訪問して朗読を行う活動を行っている。そのグループの名は「出張ROUDOKU」だ。

 彼女たちは、かつて朗読教室で学んだ仲間や知人の朗読家が集い結成されたプロフェッショナルのグループだ。ボランティアではなく料金を設定し、病院や福祉施設、教育機関などに訪問をしている。彼女たちが活動を行う中でこだわっているのが、「生の声」の魅力だ。

■生の声にしかない良さがある

 「今、電車のアナウンスをはじめ、あらゆる『声』が機械音声になりましたよね。しかし、それでも私たちは目と目を合わせて、声を発して話したり、伝えたりしたい。母の子守唄が落ち着くように、生の声にしかない良さがあるんです」

 彼女たちは朗読の良さについて、「本を目で読むことも素晴らしいですが、耳で聴くと頭に入りやすく、物語の良さも一層伝わります」と語る。

 人によるグループだが、活動形態はとても柔軟だ。大きなイベントでは全員で、家のパーティに招かれた少人数で訪れることもある。読む作品は、「今回は病院だから、前向きになれるものを」などと出張先に合わせてピックアップしている。

 「『自分の書いたエッセイを読んでほしい』という依頼もあります。ご本人だけでなく、それを聴いていた方々もとても喜んでくれます」

 「朗読」という分野を学び、実際に職とする人は多くはない。やはり「もともと本を読むことが好きだった」というメンバーが多い中、朗読を通じたとある経験が今に至る原体験となっている人もいる。

■「今でも忘れられないあの瞬間」

 「病に患い、ベッドから動くことができなくなった母のために、毎日本や新聞を読み聞かせていました。すると、同じ施設の利用者が興味を持って聞きに来てくれた。朗読をする私の周りにたくさん人が集まって来たあの瞬間が、今でも忘れられないんです」

 一方で、グループ結成前に「せっかく学んだ朗読を生かしたい」と出張で朗読をするアイデアを思いつき、「あなたのところに訪れます」と新聞広告を出したメンバーも。そのアイデアがヒントとなり、グループの現在の活動形態として受け継がれている。

 「生の声で、人に寄り添いたい」と願う彼女たち。「企業の新入社員へのお話、おじいちゃんの喜寿のお祝い、一人暮らしで寂しい方、あらゆるニーズに合わせて朗読を届けていきたい」と展望を語る。

(まいどなニュース特約・桑田 萌)

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