「暇だから撮れた」謙遜しまくる沖昌之さんに聞く 写真集「必死すぎるネコ」第2弾

 2017年に刊行され、各方面で好評を博した猫写真家・沖昌之さんの写真集「必死すぎるネコ」(辰巳出版)の第2弾、「必死すぎるネコ~前後不覚篇~」(同)が発売された。収録されているのは、必死、真剣、一生懸命さがほとばしるネコたちの奇跡的な一瞬を切り取った写真ばかり。一体どうやって撮っているのか。生まれ故郷の神戸をぶらついていた沖さんを直撃した。

 まずは「前後不覚篇」の表紙をご覧ください。どこかに張り渡されたビニールテープに目をぐりぐりと押しつけているネコさんの写真です。「必死すぎる」というより、ちょっとお間抜けな姿に見えなくもありませんが…。

 「これは文化住宅の階段で撮りました。ビニールテープは、空き家になった2階に人が入らないように張られています」と沖さん。「この子はいつも階段にいて、人が近づくと寄ってくるほど人懐こいんですが、この日は僕が来てもテープに“匂いづけ”をするのに夢中で、全然来てくれませんでした」

 その瞬間は不意に訪れた。一心不乱に顔をこすりつけるうち、テープで目隠しをしているような状態になったのだ。するとこのネコ、そのまま何故か顔をグイッと前に出したため、写真のような姿になったという。「テープでちょっと目が隠れるたびに僕が喜んでシャッターを切るので、ネコの方でも『ああ、お前はこういうのが撮りたいのね。しゃあねえな』という感じで理想的なポーズを取ってくれた…そんな気がします。ネコって人間のことを見ていないようでよく見ていますし、すごく賢いんですよ」と沖さんは笑う。

  ◇  ◇

 沖さんは1978年、神戸市須磨区出身。家電の営業マン、アパレルのカメラマン兼販売員を経て、2015年に猫写真家として独立した。あまりにも自然で愛らしいネコの姿を捉えた沖さんの写真は多くのファンを獲得しており、これまでに「ぶさにゃん」「残念すぎるネコ」「明日はきっとうまくいく」など多数の著書を刊行。ネコ写真を日々発信しているブログやSNSも人気だ。

 旅先でネコを撮影する際は、日の出から深夜までひたすら撮り続けることもある沖さん。「時間がもったいないから」と、食事もお菓子やコンビニの弁当で済ますことが少なくないという。

 「僕はたまたま本を出すことができましたが、身長180cmのヒゲ面の男が、昼間から、カメラを抱えて、人通りの少ない路地裏に、じっと潜んでいる。客観的に見たら、かなりヤバいと思います。ブログが出版社の人の目に留まり、社会的に認められて、本当によかったです!」

 「こんな写真が撮れたのは、ほとんど運だと思っています。あとは多少の経験則。ネコの気を引く餌やおもちゃも使いません。ネコは同じシチュエーションでも、その日の気分次第でやることが全然違う。『今日の日替わりは何かな?』という気持ちで、とにかく闇雲に時間を費やして撮っています。撮るより『見る』『なでる』時間の方が多い日もあります。そう、暇なんです!」

 暇な沖さんが、抜群の引きの強さと、きっと人知れず涙を流しながらモノにしたであろう写真が堪能できる「必死すぎるネコ~前後不覚篇~」は、96Pオールカラー、税別1200円で発売中。ちなみに10月18日(金)19時からは、紀伊國屋書店新宿本店で、沖さんのギャラリートーク&サイン会もある。参加には整理券(先着50人)が必要。https://www.kinokuniya.co.jp/c/store/Shinjuku-Main-Store/20190830100027.html

■ブログ「野良猫ちゃんねる。」 http://blog.livedoor.jp/nora_neco_chan/

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(まいどなニュース・黒川 裕生)

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