拳銃不法所持事件への「返答」 豊田利晃監督が16分の短編に込めたメッセージ

わずか16分の短編映画が、全国のミニシアター37館で、9月20日から一斉に通常公開されるという前代未聞の“事件”が今まさに進行中だ。監督は「青い春」(2001年)や「空中庭園」(05年)、「泣き虫しょったんの奇跡」(18年)などで知られる豊田利晃。今年4月18日、自宅で拳銃を所持していたとして銃刀法違反の現行犯で逮捕され、大きく報道された。釈放され、不起訴処分になった後、「事件への返答は映画で」と急遽この短編「狼煙が呼ぶ」を制作。豊田監督の熱い思いに応え、渋川清彦や浅野忠信、高良健吾、松田龍平ら錚々たるキャストやスタッフが集結した本作について話を聞いた。

問題の拳銃は、戦時中に近衛兵だったという祖父の形見で、真っ赤に錆びついて、とうに動かなくなったリボルバーだった。豊田監督は「正直、拳銃を所持しているという意識もなかったので、まさかこんなことで逮捕されるとは思いもしなかった」と振り返り、「自分が銃刀法違反で捕まるということ自体が、ギャグというか、あまりにも映画的でちょっと可笑しさすら感じた」と苦笑交じりに話す。

不起訴になったとはいえ、逮捕時の姿をマスコミのカメラに晒された挙句、9日間の留置、さらにはメディア、ネットなどで散々叩かれたことへの憤りや疑問が、豊田監督を突き動かした。「狼煙が呼ぶ」は、「一揆が始まる瞬間」を描くことで、社会の矛盾や不条理を前に沈黙するのではなく、立ち上がるのだという意思を明確に示している。神社の境内に続々と集結し、刀や銃を手にカメラを睨みつける男たちが何のメタファーであるかは一目瞭然だ。

「僕がいろんな映画を見ていて好きなのは、感情が湧き上がる瞬間。『狼煙が呼ぶ』は、そこ“だけ”を撮ったという感じですね。人が集まる“だけ”の映画です」

映画の完成後はメディア向けの試写会などは行わず、観客に直接届けようと、東京、福岡、京都、松山で上映イベントを開催。付き合いのある複数の映画館から「上映したい」と声が掛かったことを受け、「どうせなら全国で一斉にやろう」と各地の劇場に電話して上映館を決めていった。公開後は、舞台挨拶のため手弁当で劇場行脚を続けており、24日夜の元町映画館(神戸)は12館目だった。

短編にしたのは、もちろん渋川清彦ら人気俳優や、宮本まさ江(衣装)、笠松則通(撮影)ら超一流スタッフのスケジュールの都合もあるが、実は以前から短編を作りたいという思いがあったからだという。

「スマホや動画サイトなどの影響もあって、映像に関しては今、みんな長時間見続けるだけの集中力がない。そこに新しい映画のヒントがあると思っていた。まあ16分はさすがに極端だけど、どうせやるなら極端な方がいいと思った」

「でも2時間の映画と同じくらいの“読後感”はあると自負している。短時間だと、集中して細部まで見ようとするんですよ。だから音もものすごく細かく作っています。切腹ピストルズの音楽を、長時間続けるとスピーカーが飛んでしまうくらいの爆音にしているのも、16分だからこそできることを追求した結果です」

拳銃不法所持事件の前後で、社会の見方や考え方にどういう変化があったか、という質問には、こんな答えが返ってきた。

「ずっと事件のことばかり考えているわけではない。普通に飲みにも行くしね。留置所を出た瞬間からこの映画をやってるんで、意識は『どんな短編を作ろうか』ということに向かっていた。もし何か思うことがあるとすれば、この映画の公開が終わってからじゃないですかね。ただ、時代の風は狼煙を上げる方に吹いている気がします。今やらなくてどうすんだ、ですよ」

「狼煙が呼ぶ」の公開は概ね26、27日頃までだが、劇場によって異なるので確認が必要。

(まいどなニュース・黒川 裕生)

■「狼煙が呼ぶ」公式サイト https://www.imaginationtoyoda.com/norosigayobu

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