「金子文子と朴烈」を描いた舞台が東京・下北沢で上演 演出家と出演者が語る思い

 今年2月から日本で公開された韓国映画「金子文子と朴烈(パクヨル)」がミニシアターでの全国順次上演でヒットした。演劇界では2015年に初演されている作品「烈々と燃え散りし あの花かんざしよ」(シライケイタ作)があり、同作か13日から18日まで、東京・下北沢の「ザ・スズナリ」で上演される。かつて唐十郎が率いた劇団「状況劇場」に在籍した役者たちによって1987年に旗揚げした「新宿梁山泊」の第67回公演。演出を務める代表の金守珍(キム・スジン)氏や出演者に思いを聞いた。

 大正12(1923)年、関東大震災直後の東京であった出来事も描かれる。金氏はまず映画が日本で受け入れられたことに関して「金子文子さんが日本人であることが大きいと思います。ナショナリズムで語る作品ではなく、大いなる愛の話。日韓も政治や経済じゃなくて、文化でお互いに分かり合えたらと。100年前、朴烈が裁判で『個人が国家になれば争いはなくなる』と理想的なことを言っている。日本人とか韓国人とかじゃなく、権力者がその権力をわがものにしていることが許せない。そういう事に対する反骨精神が今まさにタイムリー」と語った。

 自身も映画では大日本帝国の大審院長となる牧野菊之助役で出演。物語がほとんど日本語で語られる韓国映画だった。「映画も、そして今回の舞台も『人間喜劇』になっている。人間味がないと、主義主張を啓蒙的にやっても分かり合えないから。主義が違っても論争しながらアジアの平和という目標に向かっていくんだと。隣人の嫌なやつでも、どこかいい部分を見つけて、お互いに共存しようよと。相手をつぶしても誰も得しない」。金氏は語った。

 9歳まで無戸籍で恵まれない環境で育ち、大日本帝国の統治下にあった朝鮮半島に移り住んだ日本人の親族の元で厳しい待遇に遭いながら育った金子。その母親役を演じる女優・佐藤梟(ふくろう)はフリーの立場で、同劇団の公演に7年ほど前から参加。「これまで出演した作品に政治的なものはほとんどなかったですし、今回、たまたま(日韓関係の悪化という)時期がマッチした。私も含めて出演者は『韓国が…』とか思ってやっている人はいないと思います」と明かす。

 佐藤は「韓国については良くも悪くもなく、映画やK-POPとかもそれほど詳しくもなかったんですが、昨年、釜山国際演劇祭に参加した時に初めて韓国に行って、現地のみなさんにすごくやさしく接していただいた。今回の舞台では、こういう時代にこういうことがあったんだ、今の生活がいかに恵まれているかを感じていただけたら。観てくださる方が豊かな気持ちになれるようにという思いで演じたい」と語った。

(デイリースポーツ・北村 泰介)

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