「二度はなし 串かつソースと あのデータ」…実験用語で笑わせる「研究者川柳」が話題
研究者の日常をユーモラスに描いた「研究者川柳」が話題になっています。日々の実験の苦労、成果を上げなければならないプレッシャーが、専門用語を盛り込みながらよまれており、SNSなどでは「まさに、研究者あるある」「まじレベル高いw」と絶賛されています。科学技術立国の中枢を支える高度な頭脳が発する「心の叫び」の数々に、はたしてあなたは共感できますか?
科学機器・研究用試薬などを販売している「サーモフィッシャーサイエンティフィック ジャパングループ」が主催している川柳コンテスト「川柳 in the ラボ」。2013年から毎年、ライフサイエンス関係の研究者を対象に募集しており、人気投票を経て優秀作品を発表しています。
ただいま2019年分の応募作品を募集中で、あらためて過去の入選作などが注目されています。2018年の上位作品はというと…(括弧内は雅号/ニックネーム)
▼最優秀人気作品賞
「怖いんです あなたの急な 思いつき」(笑顔でがんばろう)
…偉い人の一言で工数が大きく変わったり、これまでの努力が水泡に帰すこと…よくありますよね!(そういうことはうちの会社でも日常茶飯事?なので)とても、とても、よく分かります!!!…でも、最先端の研究の世界でもそうだなんて、大きな驚きでもあります。組織での仕事の進め方を考えれば、積み上げた仕様や要件が突然覆るなんてことは、よっぽどのことですものね。もしかしたら研究というのはアートな仕事に近いのかもしれません…。
▼優秀人気作品賞
「ああ、その日? 俺はいいけど ハエがダメ」(お腹痛い)
…人間関係よりも飼育しているハエのほうが大事。仕事として飼育しているものがあれば、お世話に時間をかけるのは当たり前のことですが、対象が「ハエ」だと思うと、ちょっとマッドな感じがします…。
「ホルマリン 俺の若さも 固定して」(マウス係)
…若さを保つのに、なぜ化粧品などよりも先に、標本をつくる薬を思い浮かべてしまうのでしょう。若さを「固定」という考え方も、どこか研究者っぽいですよね…
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そのほか、優秀賞が下記の句を含めて12句が選ばれています。
▼優秀賞
「二度はなし 串かつソースと あのデータ」(チーム食べるとこ)
「気になるの インスタ映えより ショウジョウバエ」(iz)
「イメチェンを エピジェネティクスと からかわれ」(ウルトラマンINO80)
「何か変 半分青い CBB」(イモころがし)
「ジングルベル 今宵の私は シングルセル」(咳しても千鳥)
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みなさんはどれだけの句の意味が分かりましたか? コンテンストを主催している同社の広報担当者に聞きました。
-どんな方が投稿されているのでしょう。
「弊社の製品ユーザーでもある、大学や国、企業の研究機関にお勤めの研究者が多いですね。ちなみに昨年は1192句の応募がありました。優秀作品は秋から冬にかけての各種学会で冊子にて配布していますが、毎年楽しみにされている方もいらっしゃるんですよ」
-しかし…不思議な専門用語がいっぱい使われていますね。知る人ぞ知る単語を使って言葉遊びをしているのが、さすが研究者というか…。
「今年の句ですと『CBB』『エピジェネティクス』などですかね。以前の年ですと「7エタ」とか… 『PPAR』というペルオキシゾーム増殖剤応答性受容体というタンパク質の略語を、ピコ太郎さんが歌う『PPAP』にかけた句もありましたね」
-ちょっと分からなくなってきたので、お聞きした用語の意味は図表にまとめてご紹介しますね…。
「いざ説明しようと思うと一言ではなかなか説明できないもので…」
-でも、研究者のみなさんというと、象牙の塔の中の存在のような印象があって、俗世から抜け出した人たちが、もっとドライに働いているのかとも思っていました。日常の愚痴みたいな句も多くて、意外に身近な存在に感じられてきたりします。
「日常をユーモラスにつづっていただくことで、研究者のお互いの思いや苦労を共有する場にしてほしいと、コンテストを実施しています。手間がかかる実験や、ボスからのプレッシャーを、川柳にして笑い飛ばしてもらい、ポジティブに研究に励んでいただきたいと思っています。また「研究者あるある」が詰まった作品をご覧いただくことで、研究者間の見えない絆を感じたり、明日の研究へのエールとして受け止めていただきたいですね」
-そういえば最近、科学技術研究をとりまく環境って厳しくなっていると聞きます。そういうのは川柳のトレンドにあらわれていたりもしますか?
「やはり常に研究者特有の問題、例えば『若手研究者の有期雇用問題』『研究費獲得のむずかしさ』『徹夜実験(ハードワーク)』は鉄板ネタとして盛り込まれていますね。もちろん世間一般のブームも敏感に盛り込まれていて、予備校教師・林先生の決め台詞「今でしょ」やAKBなどもよまれてきました」
-折しも、今年のコンテストの作品を募集中ですね。
「研究者のみなさんには、研究室で過ごしている中での濃密なできごとを17文字の川柳に込めてお送りいただきたいです。あと、この記事を最後まで読まれた一般の方々にメッセージがあるのですけど…」
-ええっ、はい、どうぞ!
「細胞や動物に合わせるため、時間的拘束が多い実験に明け暮れる研究者ですが、生物とは何かという好奇心、病気の人を救いたいという純粋な目標を持って日々研究に取り組んでいます。そんな理系人間を『変人』のように感じられることなく、川柳を通して温かく応援していただけると嬉しいです!」
(まいどなニュース・川上隆宏)
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「川柳 in the ラボ 2019」申し込みは下記ページから。応募期間は6月30日まで。
https://www.thermofisher.com/jp/ja/home/products-and-services/promotions/2019/senryu-in-the-lab-2019.html