「まずい」なんて言わせない 芦屋市の絶品給食

芦屋市が出版した給食のレシピ本
市役所食堂で提供される絶品メニュー
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 大量の食べ残しから、挙句の果てには異物混入-。「まずい給食」として話題となってしまった神奈川県大磯町の町立中学校給食。全国ニュースでも大きく取り上げられ、給食自体のイメージが下がりかねない中、兵庫・芦屋市の学校給食は「おいしい給食」として積極的にPRしている。

 今年5月には、人気メニューをまとめたレシピ本を出版。「セレブな街」でおなじみの芦屋ならではの絶品給食に注目した。

 官公庁が出版した本としては異例のヒットだ。「芦屋の給食-オシャレな街のおいしい献立」は、市立小学校全8校に加え、2015年度から給食がスタートした潮見中学校で実際に提供されたメニューのレシピが紹介されている。芦屋市役所のほか、東京、関西圏の大手書店、大手通販サイトで全国的に販売。初版3000部を出版後、すぐに重版が決まった。同市内の大手書店では売り上げランキングで1位になるなど、上々の反響だ。

 “実食の場”でも好評を博している。今年で31回目を迎えた「学校給食展」。夏休み期間中に行われ、給食メニューの試食会を先着200食で実施すると、保護者を中心に大盛況。市役所食堂でも今月に2度、レシピ本の中からスペシャルメニューとして提供した。

 10月6日の第1回目は市立山手小学校の献立を再現。「フレンチトースト」に「鶏肉のソテー ラタトゥユソース添え」と、まるでカフェ飯のようなおしゃれな仕上がり。サラダとスープもついて栄養バランスもバッチリで、オープンからわずか30分ほどで売り切れとなった。11月からは芦屋市シティープロモーションの一環として、給食メニューの料理教室を実施。地元向けのほか、市外でも開催を予定しており、アピールの場はどんどん広がっている。

 おいしさの秘密は、同市の「食育」への意識の高さだ。給食が始まって以来、自校方式を採用。栄養教諭を各校1人つけ、シチューのルーから手作りするほどこだわりは強い。市学校教育課の野間靖雅さんは「安全、安心で、温かいものを提供できる」と胸を張る。

 栄養バランスや1食の経費を守りながらも、メニューや食材調達が柔軟なのもメリットの一つ。ときには生徒の育てた野菜を使用したり、生徒の声を参考にアレンジしたこともある。子どもたちが鶏の照り焼きをごはんの上にのせて食べているのをヒントに、焼き鳥丼へ“改良”したのはその例だ。月に1度は各校の栄養士が集まって献立研究会を開く。各校独自のメニューだが、おいしさへの追求に連係プレーを惜しまない。

 子どもたちの「食」への興味が湧くような工夫もされている。地元人気店のシェフや料理人、専門家を招いて特別授業を定期的に開講。魚のさばき方や学校で育てた茶葉を摘み、お茶の淹れ方など、普段の家庭科の授業では味わえない体験で学んでいる。

 20年度までには、残り2校の市立中学校でも自校方式の給食提供を予定。育ちざかりの子どもにとっても、保護者にとっても“おいしい”限りでは。(デイリースポーツ・佐藤敬久)

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