春風亭昇太もはまる「山城」が今熱い!“マツコの時代”にリンク

雲海に浮かぶ竹田城跡。「天空の城」と称される日本一の絶景山城だ=兵庫県朝来市和田山町の立雲峡より撮影
虎丸城跡の小屋には阪神ファンが掲げたタイガースの旗も…
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 「山城(やまじろ)」と聞いて心躍る人は、筋金入りの城好きである。一般的に日本の城というと、江戸時代以降に作られた天守閣のある「平山城」を思い浮かべるが、戦国期に山岳地帯に造られた山城がここ2年ほどで注目され始めている。この時期はNHK大河ドラマ「真田丸」と「おんな城主 直虎」にリンクしており、「直虎」で今川義元を演じた芸能界随一の“城マニア”である落語家・春風亭昇太もはまっているという山城の魅力を専門家に聞いた。

 まずは“城メグリスト”の萩原さちこ氏に説明いただいた。同氏は「戦う城の科学」「日本100名城めぐりの旅」などの著書を2012年から現在まで13冊出し、全国各地で講演や講座、全国紙のウェブ版や雑誌などでの連載、昇太師匠とはトークショーやテレビのバラエティー番組でも共演している新進気鋭の城郭ライターだ。

 「近世の城は規格化されているのに対し、中世の城は個性的。実際に戦いの舞台に立っている臨場感や興奮があり、山の地形を生かした土木工事でいかに敵をしのぐかという“切羽詰まった感”がある。余計なものがなく、研ぎ澄まされた点が魅力です。山ブームもあってか、景色のよさも山城人気のひとつ。ですが、街道が見下ろせ、敵がどのくらい来ているか、どう攻めてくるのかが分からないと意味がないわけですから、景色がいいのは当たり前なのです」

 昨今、メディアに登場する“スー女(相撲)”や“プ女子(プロレス)”といった、かつては少数派だったジャンルにはまる女性たちの流れに“歴女”があるが、彼女たちとは一線を画する世界が山城にはあるようだ。

 萩原氏は“歴女ブーム”との因果関係を「歴女は城よりも武将好きが多い印象」と否定。「私が一番大きいと思うのは、サブカルが10年くらいかけて文化になった時代背景です。マツコ・デラックスさんの番組が(地上波で)成立する時代ともリンクし、昔は公言できなかった世界に入りやすくなっているのでは」と分析する。

 観光地化された市街地の平山城でなく、ニッチ(隙間)な分野を志向するサブカル精神が山城にも通じる。山歩きを楽しみながら、その奥深い魅力にはまっていくという傾向があるのかもしれない。

 10年前は、山城に至る獣道を先人が残してくれたロープを頼りに歩いたという萩原氏。「私が1冊目の著書を出版した5年前、山城は『さんじょう』と読まれるくらいのマニアックな領域でした。市民権を得たというか、定着したのはここ3年くらい。全国紙のウェブサイトに書いた山城の記事のアクセス数がすごくて連載することになったり、山城に関する本の部数も急増。現地を訪れる人も増え、世の中が変わってきたと実感しています」と隔世の感に浸る。

 では、注目の山城とは?「『山城』の不思議と謎」(実業之日本社)という著書を今春出した“古城探訪家”の今泉慎一氏に一部紹介していただいた。

 ここ2年の大河ドラマならば、「真田丸」では長野県・上田の本城でなく、群馬県の「岩櫃(いわびつ)城」に注目。「直虎」では静岡県の本拠地「井伊谷(いいのや)城」よりも、その北東にそびえる峰に築かれた「三岳(みたけ)城」に手応えがあるという。

 さらに今泉氏は「香川県の『虎丸城』は山頂からの絶景にテンションが上がります。その名からタイガースファンが訪れ、近くの小屋には阪神の旗が掲げられていました」と虎党の“隠れた聖地”を紹介。山城の代表格として有名な「竹田城」のある兵庫県では、佐用郡の「利神(りかん)城」(現在は石垣崩壊のため立入禁止)も印象に残ったという。

 城好きを公言する有名人も多い。萩原氏は「昇太師匠は落語会のある土地に早めに行かれ、周辺にある中世の城を何十年と巡られてきたそうで、本当にお詳しいです。近世の城好きではプロレスラーの藤波辰爾さん。今夏、藤波さんと初めてトークショーでご一緒するので楽しみです。NMBの山本彩さんも『熊本城が好きです』と理由を挙げて説明してくださり、お詳しいと思いました」と語る。

 約2年前から地域活性化、観光コンテンツとして山城をどう生かすかという相談を行政や企業から持ちかけられている萩原氏は「行政と地域と専門家と城ファンと企業の“五位一体”で山城を盛り上げていければ理想です」と期待を込めた。

 今泉氏は「全国にある城は3万とも4万とも言われますが、その90%以上が山城です。平城に比べると資料も乏しいのですが、地形は比較的当時のままなので、逆に言えば『想像する楽しみ』に満ちています。ぜひ現地に足を運んでいただけたら」とアピール。70年代半ば以降に生まれた両氏の思いから、城を巡る人たちの視点にも新たな世代交代が起きていると実感した。(デイリースポーツ・北村泰介)

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