大久保嘉人氏 W杯やっぱり初戦「最初からガチ」最低でも勝ち点 森保ジャパン展望
11月21日のサッカーW杯カタール大会開幕まで半年を切った。2010年南アフリカ、14年ブラジルとW杯2大会に連続出場した元日本代表FW大久保嘉人氏(39)が23日までにデイリースポーツのインタビューに応じた。J1史上最多の191得点を誇り、現役時代にドイツ、スペインの1部リーグでもプレー。自身の経験を交えながらスペイン、ドイツと同組に入った1次リーグの展望を語り、森保ジャパンを激励した。
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-1次リーグ組み合わせが決まった。日本はスペイン、ドイツのと同組。“死の組”とも言われる。
「『ナイス!』と思いましたよ。抽選会を見ていて『ここに入れ!』と言っていたら本当に入ったから」
-なぜナイスなのか。
「スペインとドイツ、そういう強い国ばかりの組み合わせは今までになかった。ここを勝ち抜いたら、よりはっきりベスト8が見えてくる」
-初戦ドイツ。2戦目にプレーオフ勝者、3戦目がスペインという対戦順をどう思うか。
「いいんじゃないですか。ドイツは前回大会の初戦に負けている(対メキシコ、0-1)。初戦にピークを合わせてこない。日本が先制点を取られてしまうとたぶん勝てないけれど、粘って粘っていけば、引き分けは狙える。最低でも勝ち点を取りたい」
-ドイツに負けると厳しい。
「負けると全敗するでしょうね。ドイツと引き分けて2戦目に勝つ。スペインとドイツがつぶし合うから(2位以内の)可能性が出てくる。1勝1分けで、スペイン戦で決まる。それが現実的かな。普通のチームと戦って予選突破しても自信は付くけれど、このグループで突破すれば、より勢いに乗りますよ」
-ドイツ、スペインでプレーした。両国の違いなど感じたか。
「ドイツは日本みたいな感じ。かなりきちっとしている。サッカーでも相当きちんとしているから大崩れしない。スペインは皆さん知っている通りのパス回し。日本もやろうとしているサッカーだから、日本としてはやりやすいところもある」
-ドイツとしては、日本戦は勝利を想定。
「当然。(日本が相手で)よっしゃ、ラッキーと思っていますから。ドイツは真面目なので、0-0の状況が続くと焦りが絶対出てくる。そこを突けば十分チャンスはある」
-警戒する選手は。
「前の選手はいっぱいいる。ニャブリもそうだし、サネは代表ではどうかな。ミュラーもいるし、得点力はすごい。だから先に点を取られると、何点取られるか分からない」
-スペインは。
「ペドリとかうまくて若い。ただ、ペドリも出ていた東京五輪で日本に苦戦(1-0)しているから、そのイメージは絶対残っているはず」
-過去、日本が1次リーグを突破した3大会は初戦で勝ち点を獲得している。一方で初戦を落とした3大会はすべて敗退。大久保氏はどちらも経験した。
「南アフリカの時は初戦に勝った時からひとつになった。ガチッと結束して、みんな自信が付いて、明るくなって」
-南アフリカのときは大会前の期待は低かった。
「ヤバかった(笑)。でも(初戦の)カメルーンに勝ってなんかすごいはまったのよ。『俺たち行けるぞ』みたいな感じが出た。ブラジルの時はみんな仲良いんだけど、一体感がまったくなかった。そしてコートジボワールに逆転負け。そこからガターンよ。すごい雰囲気悪くなって…」
-初戦が重要になる。
「ブラジルでも初戦に勝っていたらたぶん突破していたと思う。やっぱり初戦ですよ。ドイツ戦、最初からガチでいってほしい」
-現在の日本代表に感じることは。
「自分をもうちょっと出してほしいね。代表に入っているのに、この選手誰かな、どんなプレーかなっていう選手も多いし。日本代表でそういうのは絶対ダメだと思う」
-世間にまで存在が伝わってこない。
「今の人って、サッカー知らない人だったらほぼほぼ選手知らんと思うよ。昔はJリーグの選手をまだ知っていた。テレビの放送が少ないというのもあるでしょうけど、知られていないのは良くないなって。そこをどうにかしていかないと、今後Jリーグがどうなっていくんだろうという心配しかない」
-W杯で結果を出せば注目度も変わる。
「南アフリカの時は変わったよね。俺らめちゃくちゃ弱かったから。そこからあそこまで行ったから。行きと帰ってきてからでは注目度は全然変わった」
-ブンデスリーガ、リーガエスパニョーラを経験した。国民性もリーグに反映される。
「ドイツは本当に日本みたいな文化。監督から言われたことを忠実にやる。その中でも社交性があるから自分が思っていることは言うし、それをやろうとする。日本人にはそれがない。言われたことはやる。でも自分が思っていることをやったら怒られると思ってやらない。スペインは『これをやるぞ』と言われたことはやるんだけど、ほとんどは自分が思っているようにプレーする。だからああいう良いプレー、すごいなっていう創造性のあるプレーがどんどん出てくる」
-上を目指すには突き抜けた部分も必要か。
「日本はやっぱり周りを気にしてしまうから。自分を守るというか。そうなると厳しいよね。なかなかチャレンジできなくなるし。それは昔からというか、育成からくるものかもしれない。(思ったままのプレーを)やったら怒られるっていうイメージがあるんじゃないかな」
-日本ではそれが根付いている。
「そんなの関係なく、自分は自分と思ってやれば良いと思うよ。俺みたいなヤツがいっぱいいればいいんよ」
-それだとチームがまとまらない気がする。
「でも海外はそうだから。スペインに行った時なんて俺が普通。むしろおとなしい方やった(笑)」
-今の代表には突き抜けたタイプの選手が少ない。
「いないよね」
-鈴木優磨(鹿島)選手はどうか。
「いや、俺相当好きよ。いいと思う。いないから、ああいうタイプ」
-森保ジャパンでも見てみたい。
「呼んでみて使ってあげて。Jリーグでも結果を出してるわけだし。あんなオラオラしているヤツ、久々に見るもんね。ああいうのがいいんよ。でもああいう選手に限ってボロクソ言われる。そしたらなぜか俺までボロクソ言われる(笑)。『大久保みたいだ』って。俺もう辞めてるんやけど、と思うけど(笑)。でもああいうタイプはいないから、見ていて楽しいよね」
-代表でも活躍できる。
「上田綺世とのコンビもいい。いざとなった時に2人を出してみたらうまくいくかもしれない。ああいうタイプの人が入ったら、見てみたいなって思うよね」(デイリースポーツ・奥村哲明)
◆大久保嘉人(おおくぼ・よしと)1982年6月9日、福岡県苅田町出身。国見高から2001年にC大阪に入団した。スペイン1部マジョルカ、神戸、ドイツ1部ウォルフスブルク、川崎、FC東京、磐田、東京Vでプレーし、15年ぶりに復帰したC大阪在籍時の21年限りで現役引退。川崎在籍時の13年から前人未到の3年連続得点王に輝くなど、J1歴代最多の191得点。通算警告数104もJ1歴代最多。日本代表としては10年W杯南アフリカ大会、14年W杯ブラジル大会に出場した。国際Aマッチ通算60試合出場6得点。04年アテネ五輪出場。170センチ、73キロ。家族は莉瑛夫人と4男。