J1広島のGK大迫 失敗乗り越え、取り戻した挑戦者魂

 若者は、安定とは無縁な存在である。爆発的な力を見せつけるかと思えば、どうしてそんなミスをするのかとため息をつくような事態にも陥る。その不安定さが若者の弱点であり、一方で魅力でもある。

 J1広島のGK大迫敬介は7月8日の大分戦で試合終了間際に致命的なミスを二つも犯してしまい、チームは逆転負けを喫した。敗因の全てが大迫にあるわけではないが、直接的な要因であることは疑いない事実。それは大迫が最も分かっていた。

 「何をやっているんだ、俺は」

 敗戦を決めた逆転弾を食らって突っ伏した時、思わず叫んだ言葉。そこからずっと、若者の脳裏にはその言葉と失点シーンが焼き付いて離れなかった。

 練習しかない。やるしかない。林卓人をはじめとするGK王国・広島の伝統は、どんな状況に陥っても集中するひたむきな練習。スタメンを外されても、再びポジションを取り返しても、大迫はトレーニングに集中した。

 しかし、全てが昨年のようにうまくいくわけではない。スタメンに復帰した横浜FC戦、湘南戦と連続完封した後は浦和にPKを決められて敗戦。FC東京戦、横浜M戦と連続3失点。先週末の仙台戦(8月29日)でもリードを追いつかれて勝ち点1。チームも大迫も波に乗れない。

 だが、仙台戦での大迫は数々のビッグセーブでチームを救い、大きな一歩を示した。きっかけは横浜M戦での2失点目。左からのクロスをジュニオール・サントスに強烈なヘッドで決められたシーンだ。相手のストライカーが持つ破壊力が印象に残ったが、大迫は違う視点を持つ。

 「あのクロスに飛び込めなかったことが悔しい。前に出て失敗する方が出ずに失点するよりも自分らしい」

 大迫敬介の真骨頂は、失敗を恐れないこと。「怖いものなど何もない」という闘志を表現するプレーが、サポーターの心を震わせる。

 仙台戦で大迫はミスを恐れず、難しいクロスにも飛び込んでキャッチに行く姿勢を取り戻した。挑戦者精神を手にした若者は、強い。(紫熊倶楽部・中野和也)

 大迫敬介(おおさこ・けいすけ)1999年7月28日生まれ。鹿児島県出水市出身。GK。背番号38。15年にサンフレッチェ広島ユースに入団し、17年にプロ契約。19年の開幕戦でJデビューを果たし、29試合出場で正GKの座を獲得。同年5月には日本代表にも選出された。来年に延期された東京五輪でも日本代表の正GKとして期待される。186センチ、86キロ。

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