J1広島、出てこい!絶対的なFKの名手よ

19年10月5日の神戸戦(Eスタ)。直接FKを決めて喜ぶMF森島司(後方はDF野上)(撮影・中野香代)
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 広島・MF東俊希の左足が動いた。バックスイングはそれほど大きくない。しかし「シュッ」という風切りが聞こえるかのごとく、鋭いキックだ。GK大迫敬介、一歩も動けない。速くて、精密で、鋭利な直接FKがネットに突き刺さった。対浦和戦前日練習(14日)での出来事だ。

 直接FKでのゴールは、広島にとって大きな課題である。公式戦でクラブ史上最多となる14本のFKゴールを決めた森崎浩司の引退以降、FKの名手がいない。昨年、森島司が神戸戦で決めているが、彼はまだ「自分が蹴る」という強い意志を表現することが少なく、浦和戦でも直接狙える位置ではハイネルや野津田岳人に譲っている。

 相手がゴール前で守備を固めている時、流れで崩すことはどんなチームでも難しい。しかし逆に言えば、相手が密集しているからこそ、仕掛けることでファウルを誘い、FKは取りやすい。そこでゴールが取れれば相手はPA近くで球際に厳しい守備が難しくなり、結果としてスペースが生まれて流れの中での攻撃で崩しやすくなる。

 2003年鳥栖戦、森崎浩の直接FKがネットを揺らし、J1復帰を決めた。2007年天皇杯・磐田戦でやはり森崎浩が2本のFKを決めて快勝し、1週間前の降格決定に傷ついたサポーターの心を癒やした。2018年、史上初めて行われたピースマッチで勝負を決めたのは長崎出身の柴崎晃誠によるFKゴールだった。

 ゲームが止まり、サポーターの目がキッカーに集中する中、美しく弧を描いたボールがネットを揺らし、その瞬間に静寂から歓喜が爆発する。全身に鳥肌が立つような興奮は試合の空気を一気に活性化させる。直接FKによる得点は劇的だ。

 森島や東、野津田も含め、若者たちはFKゴールを目指してトレーニングを重ねている。森島も野津田も練習では何度も決めているわけで、力は持っているはずだ。決定機は作れているのにゴール量産ができない現状打破に向け、若者たちよ、直接FKを決めてくれ。(紫熊倶楽部・中野和也)

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