J1広島・松本泰志、守備の“潰し屋”プラス総合力で青山&川辺に挑む

 世の中の評価はすべからく相対的につけられる。「彼よりも上か下か」。それはビジネスもスポーツも同様だ。「ナンバーワンでなくオンリーワン」という言葉は絶対的な価値の重要性を訴えるものだが、これを殊更に主張しないといけないという事実が「絶対評価よりも相対評価」という現実を証明している。

 昨年、日本代表に選出されたボランチ・松本泰志は、今季も決して状態は悪くない。しかし、ここまで青山敏弘と川辺駿の2人が絶好調。攻守にわたって高質なプレーを見せて他者の追随を許さない。さらに今季からボランチに転向した野津田岳人が左足の破壊力を表現し始めたことで「ゲームの流れを変える戦力」として重用されている。松本泰だけでなく経験と技術に長けた柴崎晃誠すらメンバーに入れない。競争は本当に厳しい。

 特に松本泰の場合、持ち味は攻守のバランス。トータル能力で戦うタイプで試合途中でリズムを変えられるとは見なされていない。ビジネスマンにも総合性+スペシャリティーが求められる時代である。サッカー選手にも「これぞ」というストロングポイントが欲しい。

 松本泰もそこは理解している。パスワークを得意としているが、青山や川辺、柴崎も同様のタイプだ。一方で稲垣祥が移籍した今季、広島には守備で特徴を発揮できるタレントは少ない。そこは狙い目だと考えた。

 「身体を入れてボールを奪いきるプレーを意識しています」

 昨年と比較して8キロも増えた身体はたくましくなり、球際で相手をはじき飛ばすシーンも増えた。ただ、彼は決して守備的な選手になろうというのではない。守備の絶対評価を高めて総合力を相対的に上げ、先発を奪い返す。練習でゴールに迫る勢いを見せているのが、彼の野望の証明だ。

 「去年は(森島)司くんが結果を出してポジションを奪った。僕もそこを目指しているから、頑張れる」

 甘い表情の奥に鋭い眼光を宿らせ、若者は挑戦を続ける。(紫熊倶楽部・中野和也)

 ◆松本泰志(まつもと・たいし)1998年8月22日生まれ。埼玉県出身。180センチ、70キロ。MF。背番号17。中学時代はクマガヤSCに在籍し、昌平高では3年夏のインターハイで4強入り。17年1月に広島に入団し、同5月のルヴァン杯で公式戦デビュー。18年4月にリーグ戦初出場を果たす。代表歴は17年のU-20から毎年世代別で選出され、19年には南米選手権(コパ・アメリカ)に臨む日本代表にも選ばれた。

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