コロナに負けない!村井チェアマンインタビュー J再開前に全選手アンケート実施へ

 日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)の村井満チェアマン(60)がこのほど単独インタビューに応じた。日本プロスポーツ界の先頭に立って、新型コロナウイルスと闘い続けているリーダーが今、思うこと、非常事態時のトップの心得、今後の施策を存分に語った。(取材・構成=スポーツライター・増島みどり)

 ◆56クラブ、職員とは「密」になった

 新型コロナウイルス感染が拡大するなか、村井チェアマンの対応は早かった。今季のリーグ開幕節(2月21~23日)終了直後の25日、政府の感染症対策本部が「今後2週間が感染拡大を防ぐための重大局面」と発表すると、同日中にリーグ戦の延期を他のプロスポーツに先駆けて決定。この判断は結果的に、プロ・アマ問わず、実態がつかめず延期や中止に二の足を踏んでいた他競技にも決断を促す前例となった。

 26日にはJリーグ事務局を閉鎖し在宅勤務に切り替え、3月2日には、ウイルス対策の専門家を招へいし日本野球機構(NPB)と初めて定期的に連携する「対策連絡会議」を設立した。競技団体で、最初にオンライン会見を始めたのもJリーグだ。その回数は3月中旬から約1カ月で11回にも及ぶ。

 「リモートワークになって、全国56クラブの実行委員と2カ月で8回もの会議を実施できた。通常なら月1回だった。理事会も同様で、議論し、意見交換し、延期という非常事態にお互いの状況を深く知る機会が増えた結果、これは大変良い意味での「緊密」な関係が築けたと実感している」

 「新年度に事務局に新人が入ったが、何もしてあげられない。じゃあ史上最大のオンライン飲み会をやろう、と声を掛けたら何と150人が参加した。彼らの後ろに、普段なら会えない奥さんや子どもたちの姿がうかがえ、今までなら見えなかった景色だと感動した。リーグ内の会議にも、オンラインだからこそ、ちょくちょく顔を出せる。新型コロナは国境だけでなく家庭、学校、企業、コミュニティーの垣根を越える分断のウイルスだ。しかし各クラブとの連帯、事務局員との新たなつながりなど見えなかった景色を見て、ならばこちらは徹底した団結と結束で立ち向かうんだ、絶対に負けられない、そう勇気付けられた」

 ◆非常事態のトップとしての3カ条貫く

 非常事態だからこそ、プロリーグのトップとして3つを心がけている。チェアマン就任時(2014年)最初の仕事は、浦和レッズのサポーターによる人種差別問題への難しい対応となった。就任直後にもかかわらず、初の無観客試合の裁定を1週間で下した。4期目を迎え、難局に直面する今、なぜスピードを重視するのか、その原点でもある。

 「第一に、組織と情報はいつも天日干しする。新鮮な魚も隠せばすぐ傷む。天日干しでさらせば、つまり人の目に触れればその分、旨(うま)くもなるし日持ちする。もちろん良い情報ばかりではないが、それも含めて広く、天日にさらす。2つめは、非常時こそ自分の言葉で分かりやすく伝える大切さだ。このウイルスで起きる事象は瞬時に変化してしまう。原稿を書いてもらいチェックして、などという時間はない。有事こそ、分かりやすく率直に伝わるように考える。最後にスピード。情報を精査して、様子を見てからなどと、上が決断を引き延ばし、時間稼ぎをするようでは進まない。スピードは、トップの本気度を表す代替変数だ」

 ◆全選手アンケートでサポート体制構築

 非常事態宣言の期間が継続され、最短で(5月9日の再開予定日から1カ月後にあたる)6月13日を想定していたリーグ再開へのプランも再検討の必要性に迫られる。4月23日の専門家との連絡会議では、全国で感染状況の違いが指摘され、無観客での再開も提言された。何月何日一斉スタート、といったシナリオを描くのは困難で休止が長引く事態に、チェアマン、Jリーグは選手のサポートに新たな手を打とうとしている。

 「選手は今、感染への不安、再開の見通しが立たない状態でのコンディショニング、それはメンタル面も含め、集まって練習もできないのだから強い焦燥感に駆られていると思う。再開しても、激しい接触をするサッカーの特性、ベンチでマスクはいるのか、距離を取って座るのか、夏場1試合で体重が大幅に減少すると免疫力に悪影響があるのかといったさまざまな不安、疑問が選手側からも多くあると聞く。それに対し専門家の皆さんが、選手との間にホットラインを設置したらどうかと提案くださった。既存の「メンタルヘルスケア窓口」を活用するほか、全選手へのアンケートを実施し疑問や不安、不調について聞き、傾向や対策について先生方にも準備していただければと考えている」

 「アメリカの9・11(01年)、東日本大震災、熊本地震や多くの災害時、自らの危険を顧みずに救助、救命に当たる方々に、私たちは苦境で勇気をもらい励まされてきた。だから今は、医療従事者、エッセンシャルワーカーと呼ばれる方々の邪魔にならず、仕事の負担で疲弊されないよう感染防止に努めるべきだと思う。そしていよいよ再開となった時こそ選手の出番だ。筋書きのないドラマに全力で戦い、何度も立ち上がる。そういう姿をスポーツが、サッカーが真っ先にお見せして、今の恩返しができるよう、準備をしておいてほしい。サッカーはコロナウイルスで終わらない。必ず続くのだから」

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