長谷川穂積氏 井岡選手の強さとは…田中恒成選手と「年間最高試合」を深掘り

 マス・ボクシングで「手合わせ」する田中恒成(左)と長谷川穂積氏(撮影・坂部計介)
 激しく打ち合う田中恒成=2020年12月
2枚

 デイリースポーツのボクシング評論「拳心論」で健筆を振るう元世界3階級制覇王者、長谷川穂積氏(40)が、昨年の「年間最高試合」を深掘りした。YouTubeの企画で昨年末に世界4階級制覇を果たせなかった田中恒成(25)=畑中=と対談し、WBO世界スーパーフライ級タイトルマッチで現王者の井岡一翔(32)=Ambition=に敗れた大一番の裏側に迫った。3階級を制覇した2人が語る「負けを知る」意味とは-。

  ◇  ◇

 長谷川「シンプルに聞きます。井岡選手は強かった?」

 田中「やってみてわかる強さでした。小さいことがうまくて。『来い』と手招きするのは周りから見ていてもわかるけど、ちょっとサイドにずれたり、手を動かしたり、いろんなことを常にやり続けて、駆け引きの量が違いました」

 長谷川「この階級に慣れている人間と初めての経験では全然違う。引きだしやキャリアの差。大きいのは階級の差でしょう。井岡選手も階級を変えて4階級で一度負けている。(田中は)4階級の体をつくるまでに試合を迎えて挑戦が少し早かったけど、この負けで3試合分くらいの経験値はついたと思う」

 -長谷川氏も2階級上のフェザー級で戴冠し、初防衛戦で敗れた。階級の壁とは。

 長谷川「単純に(相手が)倒れない。くっついた時にパワーが全然違う。フェザー級(挑戦)では前にいって手数でポイントを取っている風で(王座を)奪取できたけど(初防衛戦の)ジョニー・ゴンサレスにはそれが通用しなかった。デカいから倒れないし、前にいってポイントをとってやろうとなってしまうけど」

 田中「今までは劣勢の時にそれが通用して巻き返したけど、今回は同じように巻き返せず負けちゃった。(相手の攻撃に)自分がきついんじゃなくて、相手が自分の攻撃に耐えられるから攻め方を変えなくちゃいけない」

 長谷川「それがわかっているから大丈夫。田中選手は足の速さやハンドスピードも含めてスピードはトップレベル。ただ、スピードでいく分、攻撃中は隙ができる。今までの相手は(田中の)スピードが速すぎて対応できなかったけど、井岡選手はキャリアで対応してきた。初めて負けを知ってどうかな」

 田中「初めて終わりを考えました。今まで世界王者としてやってきて、今回世界王者じゃない人間になって、もし次にもう1回負けたら、僕の居場所はどこになるだろうって。連敗でもしたら居場所がないなって。終わりを考えるのは今まではまったくなかったこと。理由の一つは、井岡さんは僕との試合で負けたらやめるかもしれない立場にいた。終わりってものを考えてやっている人の強さを感じました」

 長谷川「5戦目で世界王者、23歳で3階級。僕は5戦目で3勝2敗だったからすごいよ。ダメージがなければあと10年で5階級も目指せる。負けを生かせるかどうかは本人次第。今回は、変わるきっかけを見つけた試合でもあるし、強くなるきっかけを見つけた試合でもある。次にどういう試合するのかすごく楽しみだね」

 ◆田中恒成(たなか・こうせい)1995年6月15日、岐阜県多治見市出身。小学5年でボクシングを始め、中京学院大中京高で高校4冠。13年11月プロデビュー。15年5月に日本選手世界最速の5戦目でWBO世界ミニマム級王座を獲得。16年12月に同世界ライトフライ級王座を奪取し、日本最速タイの8戦目で2階級制覇。18年9月に同世界フライ級王座を獲得し、世界最速タイ12戦目で3階級制覇。プロ16戦15勝(9KO)1敗。右ボクサーファイター。兄は東京五輪フライ級代表の田中亮明。

関連ニュース

編集者のオススメ記事

ファイト最新ニュース

もっとみる

    主要ニュース

    ランキング(ファイト)

    写真

    話題の写真ランキング

    リアルタイムランキング

    注目トピックス