血を吸ってる蚊を叩いちゃいけない理由 人体にアレルギー反応を起こす唾液の正体

 私たちは蚊(か)に刺されても痛いと感じることなく、知らぬ間に血を吸われて逃げられます。そのあと皮膚に赤い腫れと痒みを感じて、初めて蚊に刺されたことに気づきます。なぜ刺された時に気づかないのか、これまでは蚊の針が非常に細いからだと考えられていましたが、最近の研究で、痛くない理由は針だけでなく「蚊の唾液」にもあることが判りました。

 蚊の唾液には血液の凝固を防ぎ、刺した時の痛みを和らげる成分が含まれていたのです。私たちが痛みを感じるのは、体の細胞に備わったTRPチャンネルが痛みを感知して、脳に伝えているからです。ところが蚊の唾液に含まれる「シアロルフィン」というタンパクはTRPチャンネルの働きを抑制する、つまり麻酔薬のような作用があって、刺されたときの痛みを感じさせないのです。

 人間の血は空気に触れると血小板の作用で凝固しますが、蚊は唾液を注入し、刺す時の痛みを和らげ、かつ液状の血液を吸い取っているのです。そして、この唾液は人体にアレルギー反応を起こすため、刺された皮膚に腫れや痒みを生じるのです。

 蚊は注入した唾液を、吸引した血と一緒に吸い戻します。ですから、肌に止まっている蚊を見つけても、血液の吸引と唾液を回収して、蚊が目的を果たして逃げるまで、辛抱強く我慢した方が痒みがマシなのです。

 でも自分の腕にとまって血を吸ってる蚊を見つけると、反射的にピシャッとやってしまいますよね。そうすると唾液の回収がされないどころか、叩きつぶした衝撃で、より多くの唾液が私たちの皮膚に流れ込んできます。爪先で横へ弾き飛ばすのはアリでも、上から叩き潰すと、「シアロルフィン」がドバッと入ってきて逆効果なんですよ。

◆松本 浩彦 芦屋市・松本クリニック院長。内科・外科をはじめ「ホーム・ドクター」家庭の総合医を実践している。同志社大学客員教授、日本臍帯プラセンタ学会会長。

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