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「後医は名医」は格言…でも、前医だって最善を尽くしているのです

 医者の世界の格言の一つに「後医は名医」という言葉があります。先に診療していた医師よりも、後から診療した医師のほうが診断や治療を的確に行いやすいという意味です。

 病気は経時的に変化するもので、初発から時間が経ってあるていど症状が完成していれば、それだけ診断もつけやすくなっていきます。それまでその患者さんを診察していた前医が、その症状に対してどのような治療を行い、どうなったか。それも後医にとって診断・治療を行う大きなヒントになります。

 特に皮膚科領域で、前の先生で薬もらって塗り続けたけど治らなくて…などと言って来られると、本来なら王道で使う薬ではなく、あえて薬効の違う薬を出してみると、あら不思議、ピタリと治ったりすることがあります。

 もしその人が初診で私のところに来ていれば、やはり王道のステロイドを出していたでしょうが、おくすり手帳を見ると、前の先生から様々なステロイドが出ている。でも治らない。なら、水虫の薬だしちまえ…治るんですね。それで名医と言ってもらっても、まさに後医は名医でして、ちっとも褒められたことではありません。

 そういう時、後医が絶対にしていけないのは、前医の診断や治療を悪く言うこと、否定することです。前の先生が王道の薬を出して治らないなら、思い切って邪道で行きますか、くらいに言っておかないといけません。

 前医の先生だって懸命に患者さんと向き合って、最善と思われる治療をしているのです。後医として行ってよいのは、前医の治療経過を味方につけて、現在考えうる最善の治療を行うことです。前医を尊重し、後医として謙虚に診療にあたる医師でありたいと、つねづね私は思っています。

◆松本 浩彦 芦屋市・松本クリニック院長。内科・外科をはじめ「ホーム・ドクター」家庭の総合医を実践している。同志社大学客員教授、日本臍帯プラセンタ学会会長。

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