【尾原徹司医師】冬に多い食中毒「ノロウイルス感染症」 コロナ同様に「人から人への感染」にも要注意

 牡蠣のおいしいシーズンになると多発するのが「ノロウイルス感染症」です。感染元の多くが牡蠣や蛤などの二枚貝。ピークは12月~2月頃で、冬の食中毒の半数以上をノロウイルスが占めています。約37℃~38℃の発熱と腹痛や下痢、嘔吐…もしかしたら「ノロウイルス感染症」かもしれません?

 今の季節、牡蠣が出回り、おいしい時期でもあります。この牡蠣を含む二枚貝などが原因で起こりやすいのが「ノロウイルス感染症」です。ノロウイルスに感染した二枚貝などを生に近い形で食べることで起こりやすくなります。

 人間の体内に入ったノロウイルスは増殖を始めます。潜伏期間は12時間~24時間ぐらい。主な症状として、約37℃~38℃の発熱が出やすく、腹痛・下痢・吐き気・嘔吐などに見舞われます。なかでも水溶性の下痢になることが多いようです。人によっては頭痛や筋肉痛を伴うこともあり「すごい嘔吐でびっくりしました」「突然の吐き気で苦しみました」などという声が少なくありません。

 なかでも乳幼児や高齢者は抵抗力が弱いため、感染すると「脱水症状」になりやすいので注意してください。脱水症状がひどい場合には病院で点滴を受けるなどの治療が必要となります。また、嘔吐物によっては気道が塞がり「窒息」を起こすことがあるので、こちらも注意してください。

 ところで、かかってしまったら…。実はノロウイルスに効果のある抗ウイルス剤はまだないため、解熱薬や整腸剤などのいわゆる対症療法が主体になります。症状が少し落ち着いてきたら、少しずつ水分補給を行ってください。症状がひどい場合は、かかりつけ医や、病院などにご相談ください。

■2次汚染「人から人」に要注意

 気をつけたいのは、嘔吐物や排泄物など汚物の処理です。この時点でノロウイルスが含まれている可能性が大だからです。人から人への2次感染を防ぐためにも、以下のことを徹底してください。

(1)汚物は素早く処理すること。汚物処理する人はゴム手袋をつけるなどして、直接、汚物にふれないように注意してください。汚物を通しても感染しやすいので、衣類などの洗濯にも気を配り、洗濯後は周辺の消毒なども忘れずに行いましょう。

(2)汚物は乾燥させないこと。乾燥すると空気感染を引き起こす可能性がありますので、できるだけ早く処理してください。

(3)手洗いなどもこまめに。感染防止のために、手洗いやうがいなどもコロナ対策同様にしっかり行いましょう。感染を広げない工夫をしてくださいね。

■しっかりと予防対策

 ノロウイルス食中毒は、ノロウイルスに汚染した食品や水を摂取することにより起こります。『85℃~90℃で90秒以上の加熱によりウイルスは感染力をなくす』と言われています。ただし、湯通し程度の加熱ではウイルスの感染力は失われないと思われます。

(1)牡蠣などの二枚貝は中心部まで十分に加熱しましょう。

(2)野菜、果物などの生鮮食品は十分に洗って使いましょう。

(3)トイレの後や、調理をする時、食事の前など、こまめに、かつ、しっかり手洗いをしましょう。

(4)手洗いの後、使用するタオルなども清潔なものを使用しましょう。

 健やかに年末年始をお過ごしください。

◆尾原徹司 東京医科大学卒業。東京女子医科大学消化器病センターを経て、神戸鐘紡病院消化器科に赴任。昭和57(1982)年に独立し、医療法人社団つかさ会「尾原病院」(神戸市須磨区妙法寺荒打/神戸市営地下鉄西神山手線妙法寺駅徒歩3分)院長に。他に介護老人保健施設「コスモス苑」、「つかさ訪問看護ステーション」、「つかさ在宅ケアセンター」「人工透析センター」なども運営。

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