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【谷光利昭医師】患者家族の立場になり重い責任を再認識…緊急手術で命が救われた父

 以前は実家に帰ることが少なかったのですが、父が肝臓がんを患っており、最近はできるだけ帰るようにしています。この前の日曜日に偶然、実家に立ち寄ることがありました。母から父の具合が悪くて昨晩は一睡もできなかったとの訴えがありました。

 診てみますと顔面がそう白で歩行時に軽度の呼吸困難を認めます。以前から患っている腰痛も辛いようで、右下腹部から下腹部全体に圧痛を認めます。前夜は鳩尾(みぞおち)に痛みがあり、朝になると右下腹部に痛みが移行しています。

 教科書的に言えば「盲腸」、医学用語では「虫垂炎」が疑われました。日曜日なので私の医院に連れていき、抗生剤の投与で一日様子を診ようかと考えましたが、歩行時の息切れと顔色も気になります。

 悩んだ挙句、私の先輩が理事長をされている大阪府守口市の病院に連れて行きました。以前、父親が鼠経ヘルニアで緊急手術をして頂いた病院です。到着後にCTを撮影すると診断は肝細胞癌の破裂による腹腔内出血でした。血液も6割程度になっており、中等度の貧血を認めました。

 もし、私が自分の医院に連れて帰り、抗生剤だけで経過を診ていれば翌日には命がなかったと思います。救急外来担当の先生が丁寧に診察をしてくださり、看護師さんも素早い丁寧な対応で緊急手術の準備を始めて下さいました。理事長が休日なのに出向いて下さり、肝細胞癌の出血を止めるだけでなく、癌の治療もして下さいました。

 具体的には、股の付け根にある大腿動脈から細い管を刺し、肝臓癌のところまで通します。癌のところに到達すると動脈を塞栓する物質と抗がん剤を注入します。言葉にすると簡単そうですが、熟練の技術と豊富な経験、知識が必要です。

 問題なく手術が終わり、父は一命を取り留めました。本当に感謝しました。他の仕事も同様なのですが、今回立場を替えてみると、改めて医師の責任は重く、また素晴らしい仕事であると再認識しました。日頃からの勉強、努力が大切であるということを教えて頂き、えりを正して頂きました。本当に有難うございました。

 ◆筆者プロフィール 谷光利昭(たにみつ・としあき)たにみつ内科院長。93年大阪医科大卒、外科医として三井記念病院、栃木県立がんセンターなどで勤務。06年に兵庫県伊丹市で「たにみつ内科」を開院。地域のホームドクターとして奮闘中。

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