【中塚美智子医師】銀歯をかぶせているのに虫歯が…金属を使った治療で知るべきこと

 銀歯がポロっと外れたので、近くの歯医者へ。外れた銀歯をくっつけたら治療は終了!と思っていたところ、歯科医師からのまさかの一言。

 「あ~中が虫歯になってますね~。作り替えましょう。」「はあっ?かぶせ物してるのに何で虫歯やねん!」みなさまのお怒りもごもっともです。

 金属の詰め物やかぶせ物と歯は、歯科用セメントと呼ばれる接着剤を介して留められていますが、口の中の環境により一部完全な接着が望めないこともあるため、どうしてもわずかな隙間ができます。

 口の中を清潔にしていないと細菌が入り込み、詰め物やかぶせ物の内側で虫歯が進んで、金属部分が一部宙に浮いた形になって外れてしまいます。金属の端は薄いので、特に歯と金属が接着していないと欠けてくることもあります。

 金属のかぶせ物の場合、歯科医師がそれを歯にかぶせた時は歯茎との境目の形状についても考えて作られていたはずですが、口の中を清潔にしていなかったり、セメントが溶けてきたりするとその部分の形態が合わなくなり、やはり隙間ができて虫歯や歯周病になってしまいます。

 また口の中は温室のようなもので、湿気も十分。歯科用金属の中にはイオン化して溶け出し、体の中のタンパク質と結合して、これまで体にはなかった新たな物質ができる場合があります。これが体にとっては異物と認識され、アレルギー反応が起こるのです。

 歯科用金属によるアレルギーは発症までに時間がかかり、直接触れていない手のひらや足の裏に水ぶくれや膿のふくろのようなものができることもあります。金属の詰め物やかぶせ物を外し、別の材料を使って治療することで症状は治まってきます。

 ではなぜ歯科治療に金属が使われるのでしょう?かむ時に奥歯にかかる力は数十キログラムといわれていますが、かみ方の癖や歯ぎしり、食いしばりなどにより、歯にさらに大きな負荷がかかることがあります。強い力に耐えられる材料として、以前から金属は用いられてきました。また、健康保険適用の材料で治療を受けると、患者さんの経済的負担も軽くて済みますね。

 近年歯科材料に関する研究や開発が進み、金属に代わる材料も出てきました。一方、一部の治療について保険診療では使えない材料を用いた場合、一定の条件はあるものの、自費診療でかかる費用との差額分のみ負担すれば保険診療として受けられるようになりました。

 治療の選択肢も少しずつ広がっていることから、ご自分の体にできるだけ問題が起こらない治療法を歯科医師とともに考え、選んでいただきたいと思います。

 ◆筆者プロフィール 中塚美智子 大阪歯科大学医療保健学部准教授。歯科医師、労働衛生コンサルタント、1級キャリアコンサルティング技能士。

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